artscapeレビュー

日本のポータブル・レコード・プレイヤー展

2016年09月01日号

会期:2016/07/30~2016/08/28

世田谷文化生活情報センター:生活工房ギャラリー[東京都]

高円寺円盤のオーナー、田口史人氏がコレクションしたポータブル・レコード・プレイヤー、約100点が所狭しと並ぶ。時代は概ね1960年代から、レコードがCDに取って代わられる80年代まで。メーカーはオーディオメーカー、電機メーカー、おもちゃメーカーまでさまざま。機能や音を重視した正統的なものもあれば、持ち運びできるかたち・サイズに最低限の機能を落とし込んだデザインもある。モダンなデザインもあれば、カラフルでポップなものもある。機能面も多様で、レコードを聴くだけのシンプルなものから、ラジオやカセットテープ、はたまたキーボードまで詰め込んだ商品がある。コレクションにはバイアスがあるかもしれないが、ポップで見た目が楽しいプレイヤーが多いのは、ポータブルという製品の特徴から、持ち運びのとき、使用するときに他人の目に触れるからなのだろう。同時に、機能的デザイン的にさまざまな冒険ができるだけのマーケットが存在していただろうということが、ここからうかがわれる。OEM製品もあるだろうが、日本のメーカーからだけでもこれほど多様なデザインのプレイヤーが製品化されていた事実は、レコードを巡るカルチャーの同時代の証言としても興味深い。田口氏のコレクションはすでに書籍になっているが、実物の色彩、質感、スケールはやはりすばらしい。[新川徳彦]

★──田口史人『日本のポータブル・レコード・プレイヤーCATALOG 奇想あふれる昭和の工業デザイン』(立東舎、2015)

2016/08/17(水)(SYNK)

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