2021年10月15日号
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artscapeレビュー

佐藤可士和展

2021年02月15日号

会期:2021/02/03~2021/05/10

国立新美術館 企画展示室1E[東京都]

佐藤可士和は、いまの日本のデザイン業界のなかでもっとも成功したひとりと言えるだろう。彼がクリエイティブディレクターとして携わった企業や商品・サービスのブランディング事例を見ても、それは頷ける。楽天、ユニクロ、セブンプレミアム(セブン&アイ・ホールディングス)など業界を牽引する面々が並ぶからだ。彼はまさに日本経済を動かしている男とも言える。空間構成から個々の展示物まですべてをディレクションしたという本展も面白かった。小難しくなく、直感的で、エキサイティングで、最初から最後まで鑑賞者を飽きさせない。この万人を虜にする力こそ、佐藤のクリエイティブの特徴である。

展示風景 国立新美術館 企画展示室1E

まず本展の入り口で無料音声ガイドの案内があるが、これは絶対に利用した方がいい(QRコードを読み取って自身のスマホで聞くタイプなので、感染症拡大防止にも対応している)。会場で立ち止まって解説文をじっくりと読むよりも、展示物を眺めながら、佐藤自身が語る音声に耳を傾ける方が頭にすんなりと入ってくるからだ。展示は彼が小学生時代に制作したという、すでに才能の開花が見られるコラージュ作品や絵画に始まり、原寸大の屋外広告、ロゴを巨大化したインスタレーションへと続く。誰もが一度は見たことのある屋外広告もロゴも、ホワイトキューブの中で観たり、巨大化されたりすることで何とも言えない違和感が生じ、刺激的に映る。こういう大胆な仕掛けが鑑賞者を飽きさせない。

佐藤は独自のブランディング手法を「アイコニック・ブランディング」と呼ぶ。そう、アイコンなのだ。シンプルで、明快、人々の記憶に残るビジュアルづくりが得意なのである。この勢いやわかりやすさは飛び抜けているように感じる。しかもロゴを核としながら、ロゴだけに留まらない、その企業や商品・サービスの価値を上げるブランディングを最終目的とする。一方で、「LINES / FLOW」と題した抽象的なアート表現にも挑んでいる。これらは、言わば彼の美意識を探る作品群だろう。小学生時代の作品にも通じる純粋さがあり、彼が得意とする簡潔明瞭な造形や色彩が生み出される背景に触れるようだった。そして最後の展示「UT STORE @ THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO」では、鑑賞者がユニクロのTシャツを買う体験まで用意されていた。なんだ、結局は広告なのか?と思いつつも、その巧みな仕掛けには脱帽してしまった。

展示風景 国立新美術館 企画展示室1E

展示風景 国立新美術館 企画展示室1E


公式サイト:https://kashiwasato2020.com

2021/02/04(木)(杉江あこ)

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