2023年03月15日号
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artscapeレビュー

The Original

2023年03月15日号

会期:2023/03/03~2023/06/25

21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2[東京都]

もう10〜20年前になるが、ミラノ・サローネの話題が日本で定着しはじめ、日本企業や日本人デザイナーの参加も相次いだことから、猫も杓子もこぞって現地へ取材やリサーチに出かけた時代があった。イタリア語どころか英語もおぼつかないにもかかわらず、私も何度か訪ねた。しかしブームが下火になり、テロや不景気、コロナ禍など世界情勢への不安も重なったことから、渡航者はだんだん減少傾向に。一方でどんな時代になろうとも、毎年、必ず足を運んでいるジャーナリストも周りに何人かいる。この展覧会のディレクターを務めた土田貴宏がそのひとりだ。本展はそんな彼のライフワークの成果を見るような内容に思えた。企画原案として携わった深澤直人も、ミラノ・サローネで華々しく発表される新作家具や日用品のいくつかを長年多岐にわたりデザインしてきた日本を代表するデザイナーだ。したがって家具や日用品を中心に世界のデザイントレンドの概要や変遷を見るという点では、本展はこの上ないのだろう。


展示風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1[撮影:木奧恵三]


タイトルである「The Original」とは、「確かな独創性と根源的な魅力、そして純粋さ、大胆さ、力強さをそなえたデザイナーによるプロダクト」だという。つまり本展で着目しているデザインのポイントとは、主に造形性なのだ。深澤が本展に寄せたコメントを見ても、デザイナーとして造形を生み出す際の葛藤や苦労、そして優れた造形への賛美などが語られている。「オリジナルのすばらしさを感じて欲しいのと、一緒に感動を分かち合いたいのだ」というように。それはそれでいいのだが、もっとデザインの本質や役割とは何かを突き詰めていくと、造形性はあくまでデザインの一要素でしかないことを思わざるを得ない。本展を見てやや引っ掛かったのは、その点だった。


展示風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー2[撮影:木奧恵三]


私もかつて雑誌やウェブマガジンなどでデザイントレンドの記事をたくさん書いてきた。そこでは有名デザイナーがデザインしたプロダクトなど、メディアで取り上げやすい記号化されたものに偏らざるを得なかったので、本展の企画に対してあまり責めたことは言えない。とはいえ、名作と言われる家具や日用品をきちんと調べてみると、造形面だけでなく、その時代の新しい素材や技術、使い方などに挑んだからというエポックメーキングな経緯が多いことは事実だ。もし私がオリジナルという言葉を解釈するならば、そうした革新性を伴い、それが人々や社会にどれほど役立ち、貢献したのかという点を重視したいと思う。オリジナルを考えることは、デザインなり、その分野のそもそもを突き詰めることと同義であることを感じた。


展示風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー2[撮影:木奧恵三]



公式サイト:https://www.2121designsight.jp/program/original/

2023/03/02(木)(杉江あこ)

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