artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
湯浅一郎 展/フランソワ・ポンポン
会期:12/13~4/5
群馬県立館林美術館[群馬県]
浅草から館林まで東武伊勢崎線の特急で1時間、そこからが遠い。最寄り駅は隣の多々良だがローカル線なので本数が少ないし、多々良駅からも歩いて20分かかるという。館林からバスも出ているが1時間に1本もない。結局タクシーで行く。なんでこんな自然豊かなというか荒野のど真ん中に美術館をつくったんだろう。1時間ほどいたが、ぼく以外たったひとりの観客にしか出会わなかった。そんなところへなぜぼくが行ったのかというと、もちろん湯浅一郎を見るため。湯浅はほぼ同年代の黒田清輝や藤島武ニらの活躍の陰に隠れがちで、作品もいまひとつ華やかさに欠けるが、どういうわけかフェルメールの絵を彷佛させるのだ。たとえば、室内の自然光を浴びた女性単身像が多いこと、彼女たちが編み物をしたり居眠りしたりしていること、背後に画中画や鏡が登場すること、そしてなにより、垂直・水平で構成される画面のなかに女性をポーズさせていること……。もちろんそんな興味で見に行くやつは約1名しかいないわけで、美術館側はこれ1本では約1名しか動員できないと思ったのか、展示室の後半はポンポンの動物彫刻のテーマ展示となっていた。湯浅とポンポン、強引な組み合わせだが、湯浅がパリに滞在していたとき、すぐ近くにポンポンのアトリエがあったという「縁」だそうだ。ムリヤリこじつけることもないけど。
2008/12/26(金)(村田真)
公開制作44 袴田京太朗 1000層
第4回府中ビエンナーレ「トゥルー・カラーズ──色をめぐる冒険」
会期:11/15~2/1
府中市美術館[東京都]
大がかりな力作を見せてくれた雨宮庸介をはじめ、原高史、村山留里子、横内賢太郎ら注目すべき作家7人によるビエンナーレ。にもかかわらず、印象が薄い。ていうか、引っかかるところがなく、あっというまに見終わってしまう。子連れだったので集中できなかったせいもあるが、ああ「色」ね、と納得してしまったせいかもしれない。つまり見る目がテーマに着色されてしまったというか。こういう若手作家の紹介展の場合、テーマなんてあとからとってつけたようなもんだから、必要ないかも。でもそれじゃあ公立美術館としてはなげやりだしみたいな。
2008/12/23(火)(村田真)
ヴィック・ムニーズ「ビューティフル・アース」展
会期:11/22~3/1
トーキョーワンダーサイト渋谷[東京都]
大地を掘り返してサイコロや傘などの日用品を描く《ピクチャー・オブ・アースワーク》、ゴミ処理場から出るゴミを使ってポートレートを描いた《ピクチャー・オブ・ガベージ》などのシリーズ。アイロニーに満ちておもしろい。でも、できあがった作品が写真でしかないところがつまらない。かといって「実物」を見ることはできないし、そもそも実物と写真のどちらを「作品」とするかはビミョーなところだし。そこがまたおもしろいともいえるのだが。
2008/12/21(日)(村田真)
室井公美子 展
会期:12月2日~12月20日
ギャラリーMoMo[東京都]
絵具をぶちまけたり擦ったりした偶然性の高い絵画だが、いくつかの作品には歪んだダイヤモンドのような五角形が見られ、よく見ると、それ以外にも不定形ながら似たような形態が散見できる。岡崎乾二郎みたいな転写かと思ったら、デューラーの《メランコリア》からの翻案なのだそうだ。ほかにも彗星が見えていたり、具体的モチーフをよりどころにしていることがわかる。
2008/12/16(火)(村田真)