artscapeレビュー
村田真のレビュー/プレビュー
むこうのさくら最終回──佐倉交流
会期:1/15
佐倉市立佐倉小学校[千葉県]
千葉県佐倉市と北海道河東郡士幌町佐倉地区という同じ地名の2カ所をアートで結ぶ、北海道在住アーティスト磯崎道佳発案の交流プロジェクト。昨年夏からそれぞれの佐倉小学校で交互に行なってきたが、最終回の今日は、一辺7メートルの巨大な風船サイコロに地元の草花のシルエットを貼った「はなサイコロ」を転がして遊ぼうというもの。最後は穴を開けて大はしゃぎ。子どもたちにとっては「交流」なんてお題目より、いま、この瞬間を楽しめばいいのかも。
関連情報:http://www.dnp.co.jp/artscape/exhibition/review/081215_03.html#t02
2009/01/15(木)(村田真)
和田守弘 展──走り去った美術家の航跡1967-2006
会期:1/13~25
神奈川県民ホールギャラリー[神奈川県]
一昨年の1月に急逝した和田さんの回顧展。ぼくは個人的には70年代末から80年代初頭にかけての数年間、多少のおつきあいがあっただけで、それ以前も以後もほとんど知らなかった。だから90年代末から再開した絵画を見たのも初めてだった。ぼくにとって和田さんといえばビデオ作家、またはビデオインスタレーション作家なので、こんな絵を描いていたのかと、ちょっと驚いた。いったいどこへ行くつもりだったんだろう。
2009/01/13(火)(村田真)
20世紀のはじまり──ピカソとクレーの生きた時代
会期:1/2~3/22
Bunkamuraザ・ミュージアム[東京都]
たまたま渋谷に用事があり、たまたま時間があき、たまたま招待状を持っていたので見に行く。このような条件が重ならなければ見に行かなかったかもしれない。そもそもぼくはこの展覧会をピカソとクレーの2人展だと早とちりしていた。つまりこのふたりの巨匠の交流とか影響関係(あるのか?)を探る展覧会だと思い込んでいたのだ。ところが入ってみたら、いきなりマティスに始まり、フォーヴィスムやドイツ表現主義が続き、ようやくピカソが現われたかと思ったらシュルレアリスムに移り、最後はクレーで終わる構成なのだ。作品はすべてノルトライン・ヴェストファーレン州立美術館(通称K20)からの出品で、しかも計64点のうちピカソ6点、クレー27点だから、ふたり合わせてようやく半分といったところ。でもまあぼく的には、ピカソとクレーよりベックマンやエルンストを見られてよかったっす。
2009/01/11(日)(村田真)
新人画会展
会期:11/22~1/12
板橋区立美術館[東京都]
戦中の1943年、靉光、麻生三郎、井上長三郎、鶴岡政男、松本俊介ら8人の画家により結成された新人画会。彼らが戦中に開いた3回のグループ展の出品作品を中心に、戦前・戦後の作品もあわせて展示している。別に戦中だからって、体制翼賛的な作品がないのはもちろんのこと、反戦的な表現もなく、淡々とふだんどおりの絵を描こうとしている。それが彼らの意図だったのだろう。ただ全体に暗い印象は否めない。興味深いのは、戦前は明るい絵を描いていた人も、戦争を機に戦後も暗い絵を引きずった(または引き受けた)ことだ。そこが彼らと同世代の岡本太郎との違いかもしれない。どっちがいい悪いということではなく。ちなみに、8人のなかでは靉光が図抜けている。
2009/01/09(金)(村田真)
牧島如鳩 展
会期:11/8~1/12
足利市立美術館[栃木県]
今年最後に見た展覧会が本年のベスト1、とはいわないまでもベスト5には入るくらいの収穫だったから、北関東まで足を伸ばしたかいがあるというもの。如鳩(にょきゅう)はハリストス正教徒で、イコン画家として知られる山下りんの手ほどきを受けたが、一方で仏画も描き、晩年は両者が共存というか混濁したまことに奇怪な宗教画(というんだろうか)をきわめた人。キリスト教の絵と仏教画の混交は、必然的に洋画と日本画の素材・様式・表現上の混在を招き、その結果、聖母子像の掛軸や油絵による釈迦涅槃図が描かれることになる。圧巻は《魚籃観音像》。ピンクの乳首やレース越しの太股も艶かしい魚籃観音を中心に、左に聖母マリアや天使たち、右に菩薩や天女たちを配したオールスター夢の競演だ。これが小名浜港の漁業組合の依頼で大漁祈願のために描かれたというから驚く。バチ当たりな気もするが、以来この港では豊漁が続くというからもっと驚く。まったく神も仏もあったものだ。
2008/12/26(金)(村田真)