artscapeレビュー
福住廉のレビュー/プレビュー
TARO賞の作家I
会期:10/11~1/12
川崎市岡本太郎美術館[神奈川県]
岡本太郎現代芸術賞、通称TARO賞の歴代受賞者のなかから、今井紀彰、えぐちりか、開発好明、風間サチコ、棚田康司、横井山泰の6名による新作を発表する展覧会。ここでも飛びぬけていたのは、開発好明。発泡スチロールと蛍光灯を組み合わせたインスタレーション、洗濯機のなかに植物を植え込んだ作品、さらにはコカコーラやお茶、そしてネクターなどの飲料を口に含んですぐ吐き出す映像作品などを見せた。
2009/01/12(月)(福住廉)
未来を担う美術家たち DOMANI・明日展2008
会期:12/13~1/26
国立新美術館[東京都]
文化庁の芸術家在外研修(新進芸術家海外留学制度)の成果発表展。田中信太郎や舟越桂、開発好明など15名の作家による作品が発表された。絵画から彫刻、染織、写真など異なるジャンルが集結しているとはいえ、群を抜いていたのは開発好明。365日、毎朝自分の顔を撮影した写真を一挙に発表し、そのうちのいくつかを編集して映像化することで、時間の経過とともに老いていく肉体の変遷を要約して見せた。世界のどこで朝を迎えようとも、つねに同じ作業を自分に課すという規則性に、生活とアートを決して分けない、アーティストとしての矜持を見た。
2009/01/11(日)(福住廉)
新人画会展 戦時下の画家たち
会期:11/22~1/12
板橋区立美術館[東京都]
戦中の1943年、靉光、麻生三郎、糸園和三郎、井上長三郎、大野五郎、鶴岡政男、寺田政明、松本竣介の8人の画家によって結成された新人画会。本展はその全貌に迫る好企画。現存する資料が少ないなか、当時の展覧会を見た者の証言を聞き取り、出品作品を特定ないしは推測するなど、学芸員の堅実な調査研究の成果が現われている。しかも、かつての展覧会の会場だった資生堂画廊の一部を美術館の中に再現してそこで当時のまま絵を見せたり、「画布購入票」や「絵画慰問行動計画」を展示することで戦時下の絵描きの暮らしを浮き彫りにするなど、展示の仕方にも工夫が凝らされている。麻生三郎夫人へのインタビューをまとめた記事やメンバーの動向と当時の美術界、政治社会の動きをまとめた年表を収めた図録も、充実した内容。こうした地道な研究の成果が存分に現われた展覧会は、もっと評価されるべきだし、もっと見てみたい。
2009/01/09(金)(福住廉)
放浪の天才画家 山下清
会期:1/2~1/7
東急東横店西館8階特設会場[東京都]
「裸の大将」としていまも高い人気を誇る、山下清の大々的な回顧展。初期の「ちぎり紙細工」から、日本全国を放浪して描いた「貼絵」、さらには句読点が一切ない日記、ヨーロッパを描いたペン画、陶器、記録映像などを網羅的に展示した。なかでも興味深かったのは、ゴッホの墓を訪ねたとき、その隣の墓のほうが格好良かったにもかかわらず、ゴッホの墓を描けといわれて、仕方なく描いたというエピソード。「天才」という神話が、決して純度100%であるわけではなく、ある程度は人為的に作られたものであることを、山下清自身が物語る、貴重な証言だった。
2009/01/06(火)(福住廉)
島袋道浩 展:美術の星の人へ
会期:12/12~3/15
ワタリウム美術館[東京都]
世界中のさまざまな土地で作品を制作している島袋道浩の個展。見所はゴルフの打ちっぱなしを体験させるコーナー。たぶんこういう機会がなければ一生ゴルフなんてやらないアートの人たちは、ぜひ体験しておくべき。
2008/12/28(日)(福住廉)