artscapeレビュー
福住廉のレビュー/プレビュー
岩崎タクジ幻燈会
会期:12月7日
鎌倉婦人子供会館[神奈川県]
美術家・岩崎タクジが写真をスライドショーで見せる「幻燈会」の新作展。紅白の万国旗によって彩られた空間にキューバ音楽が静かに響き渡るなか、二つのスライド映写機を使って次々と写真を見せていく。暗闇のなかで左右の画面を見比べていくと、色やかたちによって写真を連続させていく岩崎の意図が垣間見えるが、それを十分理解しながらも、次第に写真の世界のなかに引きずり込まれていくから不思議だ。数回にわたって同じスライドを見たのにもかかわらず、毎回ちがった写真に出会うように錯覚したのは、それだけ向こう側に意識が取り込まれていた証だろう。古い町並みや家屋、お祭りの光景を見ていると、かつての心象風景をまざまざと見せつけられるようで、胸が痛い。
2008/12/07(日)(福住廉)
石井弘和『地球防衛軍vs宇宙船地球号』
会期:12月1日~12月7日
フタバ画廊[東京都]
地球防衛軍と宇宙船地球号の闘争を描いた絵物語。ヘルメット姿の兵士たちはおのずとかつての学生運動を彷彿させるが、作者はまだ若者だった。未来的な想像力が過去の歴史に規定されていることを如実に物語っていた。
2008/12/04日(木)(福住廉)
藤井信子
会期:11月25日~12月4日
ジャックと豆の木[神奈川県]
昨年の芸大先端修了展で羽毛に覆われた巨大なお化けのような迫力のあるインスタレーションを発表した藤井信子。同じ作品を中心に、動物の皮や昆虫などを素材にしたいくつかの作品を展示した。地下の暗い室内で展示した昨年には気がつかなかったが、お化けの内側にはフラミンゴの羽毛が貼りつけられており、その鮮やかな紅色に内触覚が刺激された。
2008/12/03(水)(福住廉)
ひらがなアート~チバトリ~
会期:11月15日~11月30日
「深淵」を見せつけた(らしい)横浜の国際展とは対照的に、等身大のアートを魅せる千葉の展覧会。アンデパンダンがあり、「風俗美術館」なる企画展もあり、ワークショップにトークショーなどなど、盛りだくさんの内容だ。なかでも傑作だったのが、千葉城の天守閣で発表された岡田裕子の映像作品。いつものように全体的な尺が若干長すぎる気がしないでもないけれど、それでも地元住民をキャスティングしながら、また市内各所でロケ撮影しながら、若い男女が結ばれる物語をコミカルに映像化した手腕には唸らされる。そもそも入館料60円を支払って天守閣に登り、そこで城下町を舞台とした映像を鑑賞するという経験じたいが、十分アートと言えるが、それは「ひらがなアート」というより、その場でしかありえない「地産地消アート」というべきかもしれない。ぜひ次回も開催してほしい。
2008/11/30(日)(福住廉)
文殊の知恵熱
会期:11月29日
BankART Mini[神奈川県]
とうじ魔とうじ、松本秋則、村田青朔によるパフォーマンスユニット「文殊の知恵熱」の公演。数百人の観客が埋め尽くす会場のなかを、3人がところ狭しと行き交い、手作りの奇妙な楽器によってさまざまな音を出して、文字どおり「遊んでいた」。それが面白いのは、観客を無理やり巻き込む「参加型」の作品というより、むしろこちらから積極的に参加したくなる遊びだからだ。文殊の知恵熱はもちろん、会場全体が熱を帯びていた。
2008/11/29(土)(福住廉)