artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
2017ソウル都市建築ビエンナーレ
会期:2017/09/02~2017/11/05
DDP(東大門デザインプラザ)、トニムン(敦義門)博物館[韓国、ソウル]
東大門デザインプラザにて、UIAの世界大会に合わせて企画されたソウル建築都市ビエンナーレを見る。このエリアでは、世界各地の都市を紹介しており、どうしてもデータ展示が多い。ただし、平壌の最近の集合住宅の内装を再現した部屋はインパクトがあった。また開発過剰のため、誰も住まない新しい街区があるという中国のゴーストシティには驚かされた。ほかに環境問題、再開発、法規制、リノベーション、調査と建築提案、国境、過去の興味深いイベントなどの展示があり、東京は谷中のコミュニティを紹介していた。
写真:上=東大門デザインプラザ 下=平壌の展示
2017/10/15(日)(五十嵐太郎)
徳寿宮
[韓国、ソウル]
久しぶりに徳寿宮へ。入場料が安く設定されているためか、公園としてもにぎわっていた。いわゆる伝統建築ではなく、西洋風の意匠が混入したり、石造殿などが建てられており、外国の様式導入の変容が興味深い。同じく洋風の国立美術館徳寿館は補修中だったが、各棟に現代アートの作品を散りばめる実験的な試みがなされていた。
写真:上=徳寿宮 中=石造殿 下=現代アートの作品
2017/10/15(日)(五十嵐太郎)
The Self-Evolving City
会期:2017/09/03~2017/11/12
ソウル市立美術館[韓国、ソウル]
ソウル市立美術館へ。旧裁判所の近代建築のファサードは残るが、あくまでも皮一枚という感じで、背後に現代的な空間が展開する。イギリス年のようで、2階、3階では、ジェレミー・デラーやモナ・ハトゥムなど、ブリティッシュ・カウンシルのコレクションによる日常に目を向けた政治的、社会的な現代アートを展示していた。また1階では、UIAに合わせた建築の企画展「The self-evolving city」を開催し、有名な作品の模型も交えながら、過去から現在、そして未来へと、建築・都市を紹介する。もっとも、個別のキャプションが少ないので、一般の人にわかりにくいのではないかと思われた。
写真:上=ブリティッシュ・カウンシル コレクション 下=The Self-Evolving City
2017/10/15(日)(五十嵐太郎)
ゲッコーパレード『リンドバークたちの飛行』
会期:2017/10/12~2017/10/17
島薗家住宅[東京都]
千駄木に島薗邸という国登録有形文化財の一軒家がある。生化学者の島薗順雄(1906-1992)の自邸として1932年に建設された、洋館に和館をついだ和洋並置式の住宅だ。戦時中は軍による接収を避けるため、診療所として使われていたこともあるらしい。軍用機や軍用艦をモチーフにあしらったステンドグラスが当時の記憶を微かに湛えている。
埼玉県蕨市を拠点とするゲッコーパレードは2016年、本拠地である旧加藤家住宅で「戯曲の棲む家」シリーズとして5本の戯曲を上演し、『リンドバークたちの飛行』はその1本として初演された。ブレヒト作のこの戯曲はタイトルの通り、チャールズ・リンドバーグの大西洋横断飛行を題材とし、もともとはラジオ劇として書かれた作品だ。風や寒さ、眠気と戦いながら孤独に飛び続けるリンドバーグの姿を、ゲッコーパレードは6人の演出家(黒田瑞仁、柴田彩芳、本間志穂、渡辺瑞帆、市松、古賀彰吾)の演出で上演した。演出家と一口に言っても演劇、現代美術、音楽、建築、身体表現、大道芸と専門はさまざまで、それぞれが場面ごとに凝らした趣向が楽しい。
観客はリンドバーグに寄り添い部屋を渡っていく。部屋ごとに現れては消えるリンドバーグの姿は、住居としての役割を終え、静かに微睡む島薗邸が夢見る記憶のようにも思われた。もちろん、島薗邸とリンドバーグとは直接には何の関係もない。だが、飛行機の性能向上は第二次世界大戦に大きな影響を与えた。リンドバーグの夢は戦争を経由して現在に接続されている。過去への視線は同時にかつての未来を覗きこむ。戯曲と建築はどちらも歴史の器だ。上演は二つの異なる記憶を現在に響かせる。
今回の再演は文化財となっている建築で同作を上演していく「家を渉る劇」シリーズの第1弾。すでに第2弾として2018年2月には鎌倉の旧里見弴邸での上演も予告されている。岸田國士『チロルの秋』をテキストに使った本拠地公演も12月18日(月)まで上演中だ。
2017/10/14(土)(山﨑健太)
震災・大事故と文化財を考えるプロジェクト シンポジウム「厄災の記憶 その表象可能性(はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト)」
いわき芸術文化交流館 アリオス 中劇場[福島県]
いわき芸術文化交流館アリオスの中劇場で開催した震災・大事故と文化財を考えるプロジェクト・シンポジウム「厄災の記憶 その表象可能性」に参加した。現代美術、美術史、広島の原爆、第五福竜丸の事故、民俗学、建築学など、各分野の学芸員や研究者ら、12人が円卓で討議している様子を、ぐるぐるまわりながら藤井光が撮影する。厄災の記憶と表象をめぐってさまざまな話題が語られ、あっという間の休憩なしの3時間だった。これは映像作品として編集され、来年パリで発表される予定らしい。
2017/10/05(火)(五十嵐太郎)