artscapeレビュー
美術に関するレビュー/プレビュー
清家冨夫「OVERLOOK」

会期:2012/03/02~2012/04/28
フォト・ギャラリー・インターナショナル[東京都]
清家冨夫は日本よりはむしろ欧米諸国で高い評価を得ている写真家。1980年代に発表した女性ポートレートのシリーズ「ZOE」を皮切りに、イギリス・ロンドンのハミルトンズ・ギャラリーやアメリカ・カーメルのウェストン・ギャラリーなどで個展を何度も開催してきた。その詩情あふれる、高級感を漂わせる作品にはファンも多い。日本人には珍しく、プリントで勝負できる写真家のひとりといえるだろう。
今回の新作は、これまでモノクローム・プリントで作品を発表してきた彼のイメージをくつがえす意欲作である。デジタル、カラー、インクジェット・プリントという新たなジャンルに踏み込もうとしている。タイトルが示すように、画面はやや高い場所から海辺を「見渡す」視点で統一されている。その3分の2は海面が占め、残りは砂浜だ。海は季節や天候の変化によって、金属的な輝きを発したり、シルクの布のように柔らかくうねったりしている。その海面と砂浜とのちょうど境界のあたりに、人や犬の姿がぽつりぽつりと見える。その距離の取り方が絶妙で、突き放しているわけでも感情移入しているわけでもない、とてもきれいなシルエットとして処理されているのが目に快い。カラーといってもよくコントロールされたモノトーンの画面なので、あまりうるさい感じはなく、いかにも清家の作品らしく静謐な雰囲気を保っている。完成度の高いシリーズとして成立しているのではないだろうか。
撮影地は清家がよく滞在しているイギリスのブライトン・ビーチだという。ハミルトンズ・ギャラリーから、限定1,000部で同名の写真集も刊行されている。
2012/03/28(水)(飯沢耕太郎)
サイモン・エヴェリントン essence

会期:2012/03/27~2012/04/08
楓ギャラリー[大阪府]
陶板をT字状に貼り合わせた大小のピースをつくり、それらを自由に合体させては棒で叩いて成形した陶オブジェ。金属質の色合いを持つ作品は、まるで岩かひしゃげた鉄の塊のようにも見え、強い存在感を放っている。一部の作品は青、赤、オレンジに着彩されているが、このどぎつい色は釉薬ではなく、焼き終えたオブジェにアクリル絵の具で彩色したものだ。しかし、このどぎつい色合いが造形と絶妙にマッチしている。陶オブジェの表現にもまだまだ伸びしろは残っていることを実感した。
2012/03/27(火)(小吹隆文)
日常の変容──多摩美術大学大学院油画修了生有志学外展

会期:2012/03/26~2012/03/31
BankARTスタジオNYK[神奈川県]
BankARTでは1月からずっと美大の卒展をやっているが、そのなかではこれがもっともレベルが高かったと思う。まあ大学院だから平均点が高いのは当然だけど、でも残念なのはある程度パターン化しているようで、よくも悪くも飛び抜けて注目に値するもの、つまりベラボーな作品がなかったこと。そのなかでも好感がもてたのは、余白を大きく残しながら植物の実のようなものを描く姜善英、延々と自画像(ナルシスティックでないのが幸いだ)を描き続ける河本咲子、しわの寄った毛布にこだわる渡邊聡志、妖怪女を描いた襖を組み立てて小屋にした田川春菜あたり。
2012/03/27(火)(村田真)
北川純 展覧会

会期:2012/03/17~2012/04/01
ギャラリー*ショップちりめんや[神奈川県]
元呉服店だったアートショップちりめんやのショーウィンドーで小展覧会。4本の造花のバラの花芯部が縦長の楕円形になっていて、その上端にダイヤのように輝く粒がポツンと。いわゆるクリちゃんですね。いやもちろんクリスタルのことで。
2012/03/26(月)(村田真)
「つくるが生きること」東日本大震災復興支援プロジェクト展

会期:2012/03/11~2012/03/25
3331 Arts Chiyoda 1Fメインギャラリー[東京都]
3331アーツ千代田の「つくることが生きること」展の最終日、トークイベントのために訪れた。これは東日本大震災復興支援プロジェクト展であり、陶器浩一研究室+高橋工業が気仙沼に建設した竹による集会所や椿昇のクリーンエネルギーを提案する作品など、約70組の建築家、アーティスト、デザイナー、企業、NPOの活動を紹介する。建築に関しては、「311ー東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展とかぶる事例も多いが、むしろ建築以外のプロジェクトが混ざっていることが特徴だろう。危機的な状況に対して、多様な主体がそれぞれの特性を生かしたユニークなプロジェクトを展開したことがうかがえる。
2012/03/25(日)(五十嵐太郎)


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