artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

吉田夏奈 展

会期:2012/04/02~2012/04/25

LIXILギャラリー[東京都]

ギャラリー中央に巨大な歪んだ楕円形のテーブルが置かれ、その表面に中心に行くほど濃い青が塗られ、端には緑が配されている。初め湖の地図かと思ったら、魚眼レンズで下からのぞいた山々の風景だった。かたわらには一辺が1メートル足らずの立方体が置かれ、上面を含めた5面にびっしりと樹木が描かれている。つまりこれ、森の立体絵。壁のコーナーには左右3枚ずつ計6枚のパネルにこんもりとした森の絵が。昨年、東京オペラシティのプロジェクトNに壁面いっぱいの絵を出していた人だ。この人のこだわりは、山や森のイメージを決して「1枚の絵」に収めないことだ。山も森も1枚に収められるほどケチなものではないと考えているのかもしれない。でも一歩間違えるとトリックアートに。

2012/04/12(木)(村田真)

小野サボコ HIKARI WO TATAKU

会期:2012/04/09~2012/04/14

Gallery K[東京都]

小野サボコはこれまで薄いアルミニウムの表面に図像を刻印した平面作品を制作してきたが、今回発表されたのは具象的な方向から一転、アルミニウムの広い表面に細かい打点を打ちこんだ作品。光を反射しながらゆるやかに湾曲する表面に穿たれた無数の窪みは、特定の図像を結ぶわけではなく、ただ繊細な打撃の連続を物語っている。それが、例えば鉄の塊と向き合う多和圭三のような力強い肉体運動を彷彿させないのは、ひとえにアルミニウムという極薄の素材によるのだろう。多和が重厚な鉄のなかから柔らかな表面を掘り出しているとすれば、小野はアルミニウムの軽いとはいえ脆いわけではなく、かといって堅牢なわけでもない特質をていねいに引き出したと言えるのかもしれない。

2012/04/12(木)(福住廉)

「近藤守」日本画展

会期:2012/04/09~2012/04/14

コバヤシ画廊[東京都]

銀座の街並みをとらえたモノクロ写真かと思ったら、正真正銘の日本画だった。近藤守の絵は、墨でていねいに描かれた街角の風景と、縦横無尽に走る土色の太い線が重複しながら同居したもの。大胆に採用された一点透視図法と、3つの壁面に連続させた画面の拡がり、それらのあいだをうねりながら貫く線の動きが、今日における都市の猥雑なエネルギーを巧みに引き出していた。技法や様式の点では従来の日本画を踏襲しているが、モチーフや効果の面では来るべき日本画を予見していたように思う。むろん、予断は許されないが、もしかしたら「これまでの日本画」と、「これからの日本画」の分水嶺になりうる作品なのかもしれない。

2012/04/12(木)(福住廉)

蕭白ショック!!──曾我蕭白と京の画家たち

会期:2012/04/10~2012/05/20

千葉市美術館[千葉県]

蕭白とその周辺の若冲、大雅、応挙らの作品を集めたもの。東博の「ボストン美術館展」では蕭白が目玉のひとつになっているので、それに合わせた便乗企画か。ほおあるある、《柳下鬼女図屏風》に《林和靖図屏風》に《寒山拾得図屏風》に《雪山童子図》……。やっぱり蕭白はすごい、キチガイだと思いながら出口に来て、でもなにか物足りないなあと考えてみたら、《群仙図屏風》がなかったことに気づいた。しまった見逃したと思って出品目録を見ると、会期後半にしか展示されないらしい。目録によれば全期間を通じて展示される作品は1割にも満たず、大半が会期中に展示替えされるそうだ。もういちど見に来いってか?

2012/04/10(火)(村田真)

artscapeレビュー /relation/e_00017159.json s 10029903

石井香菜子 展──逃げ水のような

会期:2012/04/06~2012/04/15

ギャラリー零∞[東京都]

天井から窓枠のような白い枠がいくつか吊るされ、そこにビルの風景をプリントした半透明の紗のようなものがカーテンみたいに掛かっている。浮遊する窓のイメージは刺激的だが、鮮烈というほどではない。階下の銀座西欧ギャラリーでは石井を含めたグループ展「36.9℃」が開かれており、そこでも石井は写真と映像を出品。写真はベルリンの窓を撮ったもので、工事中のような内部とガラスに映り込んだ外の風景をダブらせている。映像は沖縄でのクルーズを撮ったもので、これも窓に映る陸の風景と海景が重なって見える。いずれも内と外、鏡像と実像との境界域に踏み込んだ作品。

2012/04/10(土)(村田真)