artscapeレビュー

パフォーマンスに関するレビュー/プレビュー

「不信 ~彼女が嘘をつく理由」

会期:2017/03/07~2017/04/30

東京芸術劇場[東京都]

三谷幸喜「不信 ~彼女が嘘をつく理由」@東京芸術劇場。同じ間取りに暮らす集合住宅の2組の夫妻(段田安則、優香ほか)が、小さな嘘から転げ落ち、引き返せない地点を越えてしまう。シンメトリカルなセット、水平移動しながらさまざまな配置になる椅子群、中心軸の舞台を両側から挟む観客席など、空間デザインも交換可能性を示唆しており、興味深い。

2017/04/06(木)(五十嵐太郎)

プレビュー:akakilike『家族写真』

会期:2017/05/19~2017/05/21

京都芸術センター[京都府]

客席空間の壁際で、あるいは一番奥で、暗闇に身を潜めて三脚を構えた写真家が、舞台上のパフォーマンスを撮影する。その時、写真家の身体は(上演中の舞台にとっても観客の意識においても)限りなく消去され、「不在」のものと化している。ところが本公演『家族写真』は、写真家も「出演者」として舞台に上がり、ダンサーや俳優らと「家族」の一員を演じつつ、舞台上で同時進行的に「撮影」を行なうというものだ。写真家の「撮る」身体や行為の露出・前景化がまずは企図される。この作品は、演出家、振付家と写真家が共同制作する企画『わたしは、春になったら写真と劇場の未来のために山に登ることにした』のひとつとして、2016年8月に京都のアトリエ劇研で上演された。また、舞台上で写真家・前谷開が撮影した写真作品は、個展「Drama researchと自撮りの技術」として、12月に京都のDivisionで展示された(それぞれの詳細は、下記のレビューをご覧いただきたい)。
再演となる今回は、前回の出演者6名に加え、ダンサーの佐藤健大郎が新たに参加する。演出の倉田翠によれば、出演者たちが同じようにテーブルを囲みつつ、少しずつ変化が入ってきて、物語が「家族」の外に広がり、再演というより再制作の形に近いという。「家族」という単位のフィクショナルな危うさと強固さ、それをメタフォリカルなレベルで支える「簡易テーブル」という舞台装置、団らん/葬儀といった集合的な行為や依存/苛立ちといった愛憎的な感情を抽象化した運動、さらには写真家の「撮る」身体の露出・前景化、「見る」視線と「見られる」客体との往還、「フィクション」とその記録行為の併存、舞台のフレームと写真撮影のフレームの二重化/ズレなど、本作の魅力は尽きないが、そこにどう新たな変化が加わるのか、非常に楽しみだ。


撮影:守屋友樹

関連レビュー

「家族写真」|高嶋慈:artscapeレビュー

前谷開「Drama researchと自撮りの技術」|高嶋慈:artscapeレビュー

2017/03/29(水)(高嶋慈)

読響第94回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

会期:2017/03/20

横浜みなとみらいホール[神奈川県]

下野竜也が読響で首席指揮を務める最後のコンサート@みなとみらい。プログラムが面白い。マニアックなフィリップ・グラスのミニマル・ミュージックと、彼の思い入れがあるドヴォルザーク「新世界より」の組み合わせだけでも変わっているが、冒頭とラストのおまけがパッヘルベルのカノンである。オーケストラで、こんなにベタ曲をと思いきや、最初のカノンの演奏では、低音を中心手前、高音を周囲に散らし、立体的な音空間をつくりあげる。そして、最後は順番に演奏者が増え、全員になると、今度は順に退場し、最後は誰もいなくなるという凝った演出だった。

2017/03/20(月)(五十嵐太郎)

神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2017 W.A.モーツァルト作曲 魔笛 全2幕

会期:2017/03/18~2017/03/19

神奈川県民ホール[神奈川県]

ともすれば、子どもだましで、コミカルな学芸会風の装置になりがちなこの演目に対し、闇と光、回転するリング群だけで構成された舞台美術は、驚くべきシンプルなものだが、佐東利恵子らのダンスとナレーションを増量している。おそらく正統なオペラファンには目障りかもしれないが、こうした実験がなければ、今回の演出にわざわざ勅使川原三郎を起用した意味がない。美しい舞台で、指揮や歌もよかった。

2017/03/19(日)(五十嵐太郎)

舞台芸術創造事業 ストラヴィンスキー「兵士の物語」

会期:2017/03/18

東京文化会館[東京都]

革命や戦争で資産が奪われ、十分なメンバーを集めにくいなか、巡回公演で稼ぐことを考えてつくられた作品である。なるほど、シンプルなアンサンブルと演者陣だった。語り手に能楽師を入れ、台詞、設定、背景を日本化した演出によって、欲望をめぐる兵士と悪魔の駆け引きが描かれる。

2017/03/18(土)(五十嵐太郎)