artscapeレビュー

引込線 所沢ビエンナーレ2011

2011年10月01日号

会期:2011/08/27~2011/09/18

所沢市生涯学習推進センター、旧所沢市立第2学校給食センター[埼玉県]

3回目を迎えた「引込線」。会場をこれまでの西武鉄道旧所沢車両工場から所沢市生涯学習センターと旧所沢市第2学校給食センターに移し、参加作家の選考も実行委員会による合議制から4人の美術家(伊藤誠、海老塚耕一、遠藤利克、岡崎乾二郎)による責任選考制に切り替えられた。そして、何より「文化庁主催事業」というお墨付きが加えられたところに、今回のもっとも大きな特徴がある。ただし、この展覧会がこれまでそうだったように、今回も作品の質より空間の魅力が際立っており、とりわけ給食センターはそれ自体が見事な造形美を誇っていた。その反面、生涯学習センターの会場は体育館の茫洋とした空間に作品が埋没していたが、同会場内のプールに設置された遠藤利克の作品だけは、例外的にその場と調和していたように見えた。プールの広い空に打ち立てられた黒い木枠のインスタレーション。それは焼け野原に残された廃墟のようでもあり、遠景に垣間見える集合住宅の未来像を予見しているようでもある。3.11以後という第二の戦後を迎えた今、未来と過去を同時に幻視させる、きわめて霊性の強いインスタレーションである。

2011/09/13(火)(福住廉)

2011年10月01日号の
artscapeレビュー