artscapeレビュー
東北芸術工科大学 卒業・修了展(東京展)
2014年03月15日号
会期:2014/02/23~2014/02/27
ロビー階 第3展示室 ロビー階 第4展示室 ギャラリーA[東京都]
「島からのまなざし」の隣でやってたんでついでに見る。が、ここは工芸の展示だけで、絵画は上の会場でやってるらしい。スルーしようかとも思ったが、ふらっと入ってみた。いやー見てよかったー。境界線に位置する人間を小さくフィギュアのように描いた高橋洸平の《越境》も、ゼロ戦、グリコのマーク、食い倒れ人形などで現代日本を表わしたハタユキコの《ワンダフルニッポン》もよかったが、なんつったって久松知子の大作《日本の美術を埋葬する》が逸品。幅5メートル近い横長の画面に、クールベの《オルナンの埋葬》の構図を模して約30人もの画家や批評家を描いた「歴史画」なのだが、登場人物は、中央に岡倉天心、横山大観、平山郁夫、高階秀爾、辻惟雄、北沢憲昭、浅田彰、椹木野衣ら、右手に藤田嗣治、松本竣介、奥村土牛ら、左手に岡﨑乾二郎、村上隆、会田誠、そしてなぜかサーフボードを抱えたクリスチャン・ラッセンまで、ほとんど知った顔ばかり。みんな日本の近代美術を支えてきた人たちだが、しかしずいぶん偏ってる気がするのでよくよく見ると、とくに「日本(日本人)の美術」を追求した人に絞られていることがわかる(ラッセンはおそらく日本人の美術趣味を逆照射したという意味で)。作者の久松(左手前に少女の姿として登場)は日本画専攻で、画材もアクリルと岩絵具を併用しており、内容的にも形式的にもまさに日本画と洋画の混在する「日本の美術」を総括しようとしているのだ。さらに想像を膨らませれば、手前に埋葬用の穴、背景に富士山や雪山が描かれていることから、「総括」の名の下に仲間を殺して埋めた連合赤軍事件や、オウム真理教事件を思い出させないでもない。これは力作。あっぱれ!
2014/02/27(木)(村田真)