artscapeレビュー

安齊重男「MONO-HA BY ANZAI」

2014年03月15日号

会期:2014/01/17~2014/01/22

ツァイト・フォト・サロン[東京都]

安齊重男は1969年頃から日本の現代美術家たちの展覧会を撮影し始めた。当初は純粋に展示の記録として撮影を続けていたのだが、20年、30年と時が経つにつれて、写真の持つ意味が少しずつ変質していったのではないかと思う。当時の現代美術シーンの貴重な記録という意味合いは、もちろん失われているわけではない。だが、それだけでなく、写真家と美術家たちの交流の様子、展示会場を取りまく社会的環境、さらに当事者である美術家たちの個性的な風貌などが写り込んだ、写真家・安齊重男の「作品」として評価されるようになっていったのだ。
今回のツァイト・フォト・サロンでの安齊の個展のテーマは、1970年代前半の「もの派」の作家たちの展覧会場である。取り上げられているのは菅木志雄、小清水漸、榎倉康二、高山登、本田眞吾、関根伸夫、李禹煥、成田克彦、高松次郎、原口典之。吉田克朗の11人。いずれも「もの派」の代表作家として、国内外で高く評価されているアーティストたちだが、当時はほとんどが20歳代の若手であり、世間的にはほぼ無名であった。安齊はむろん展示会場の正確なドキュメントをめざしているのだが、同時に彼らの自然発生的なパフォーマンスがいきいきと写り込んできている。菅、榎倉、関根、高松など、すでに故人となってしまったアーティストも多く、彼らの存在感が作品と共振して、異様なエネルギーの場を形成していることが伝わってきた。48点の展示作品の大部分は、70年代にプリントされたヴィンテージ作品であり、モノクロームの印画紙の生々しい物質感が、やはり彼らの作品と共鳴しているようにも感じた。

2014/02/12(水)(飯沢耕太郎)

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