2017年07月15日号
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artscapeレビュー

クエイ兄弟 ─ファントム・ミュージアム─

2017年07月01日号

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会期:2017/06/06~2017/07/23

渋谷区立松濤美術館[東京都]

米国出身で、現在はロンドンを拠点に幻想的な人形アニメーションを制作しているクエイ兄弟の作品を紹介する回顧展。1947年に米国ペンシルベニア州で生まれた一卵性双生児のスティーブン・クエイとティモシー・クエイの兄弟は、1965年にともにフィラデルフィア芸術大学(PCA)に進学し、イラストレーションを専攻。1969年に英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)に進学したときもイラストレーション専攻であった。PCA在学中よりすでに自主的にアニメーション映画を制作していたクエイ兄弟だが、1979年、RCAで映画を専攻した友人キース・グリフィス(1947-)の勧めで、英国映画協会より資金を得て、本格的に映画制作を始めた。今日まで、彼らはコマ撮りによる人形アニメーションと実写映画、そして両者を融合した作品を創り続けている。彼らに《ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋》(1984)というタイトルの作品があるように、東欧アニメーションなどの作品に影響を受けた、シュールで幻想的な作風が特徴だ。松濤美術館での展示は、初期のイラストレーションと、彼らがデコールと呼ぶ人形アニメーションの場面を再構成したボックス、これまでに制作した映像やインスタレーションのパネルによる紹介と、映像ダイジェスト版の上映で構成されている。また、兄弟が影響を受けたというポーランドのポスターも出品されている。展示の見所はやはりデコールの数々だろう。なかでも丸いレンズ越しに見る形式のそれらは、怪しい見世物小屋を覗き見るかのような印象を抱く作品だ。
ところで映像作品なら理解できなくもないのだが、イラストレーションやドローイングを彼らはどのように共同制作しているのだろうか。本展コーディネーターである株式会社イデッフ代表 柴田勢津子氏によれば、彼らはほんとうに二人で描いているとのことだ。なるほど、神奈川県立近代美術館<葉山館>で行なわれた公開制作の記録映像(https://youtu.be/LqNvm743qOI)を見ると、確かに、二人が、なにか打ち合わせるでもなく淡々と絵を仕上げてゆく様子が写っている。柴田氏の話では、映像作品においても兄弟のどちらが何をするという明確な役割分担があるわけではないのだという。さらに、これまで彼らは2週間以上離れていたことがないという話まで聞くと、一卵性双生児であるクエイ兄弟のあいだにはなにか言葉以外の不思議なコミュニケーションの手段が存在するのではないか、そして二人の存在自体が彼らの奇妙な作品の一部なのではないだろうかと思われてくる。
なお、映像作品に関しては、7月8日から28日まで、渋谷・イメージフォーラムで合計30作品が上映される。[新川徳彦]


会場風景

2017/06/16(金)(SYNK)

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