2018年09月15日号
次回10月1日更新予定

artscapeレビュー

書籍・Webサイトに関するレビュー/プレビュー

小田原のどか編著『彫刻 SCULPTURE 1』

発行所:トポフィル

発行日:2018/06/30

彫刻家・小田原のどかによる叢書『彫刻 SCULPTURE』の刊行が始まった。その創刊号である本書には、「空白の時代、戦時の彫刻」と「この国の彫刻のはじまりへ」という2つの特集に加え、編者の恩師でもある彫刻家・小谷元彦と青木野枝へのインタビュー、山田亮太の詩篇「報国」、そして編者と白川昌生、金井直による鼎談「『彫刻の問題』、その射程」が収録されている。以上のラインナップを見てもわかるように、本書は、昨年同じくトポフィルから刊行された『彫刻の問題』の議論を継承・発展させたものであると言ってよい。

驚くべきは、その密度と熱量である。約500頁にわたる本文に加え、それに関連する「彫刻・碑マップ」や関連年譜・索引、そして約40頁におよぶ英文要旨にいたるまで、この編集・造本・発行をひとりの個人が手がけたという事実には、ただひたすら驚嘆するほかない(版元のトポフィルとは、小田原がメンバーとして関わる出版プロジェクトの名称である)。本書が「1」と銘打たれているように、すでに続刊も告知されており、2019年夏にはアルトゥーロ・マルティーニの「彫刻、死語」と、クレメント・グリーンバーグの「新しい彫刻」の邦訳を収めた『彫刻2』が刊行される予定であるという。

先に見た2つの特集名が示すように、本書がおもに焦点を合わせるのは、近代の黎明期、そして戦時下における日本の彫刻の姿である。とはいえそれは、いわゆる「日本の近代彫刻」の「お勉強」にとどまるものでは毛頭ない。本書の巻頭言として書かれた「近代を彫刻/超克する」が明言するように、その根底にあるのは、彫刻を語ることが「この国の近現代史に光を当てることに他ならない」(17頁)という切なる問題意識だ。その成否については、ぜひとも本書に当たっていただければよいと思う。最後にあらためて特筆しておきたいのは、このような遠大な射程をもった叢書をひとりの個人が手がけたという、その事実がもつ意味である。本書を読んでいて何よりも感動をおぼえるのは、その文章のすみずみから、編者の抑えがたい強烈な怒りが感じ取られるところである。それは狭義の「彫刻の問題」にとどまらず、いまなお遍在する社会的な不正義(おもに女性に対する)への怒りだと私は理解した。かつて、ユダヤ人追悼碑のコンペティションで審査員を務めたジェームズ・ヤングの言葉を引きつつ、「ここから千年先まで議論が続くことを私は夢見ている」(16頁)と彼女はいう。いささか大げさな気がしないでもない。しかしその熱の籠もった文章を読むと、その直後に書き添えられた「さしあたって五〇年・・・・・・・・・、数年に一度のペースで、彫刻をめぐる論集を定期的に刊行する」(強調引用者)という言葉も含め、俄然真実味を帯びるところが不思議だ。

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彫刻を見よ——公共空間の女性裸体像をめぐって|小田原のどか:フォーカス

2018/07/25(水)(星野太)

カタログ&ブックス│2018年7月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

会田誠展「GROUND NO PLAN」図録

制作・発行:公益財団法人 大林財団
編集:柴田直美
発行日:2018年7月
定価:非売品
サイズ:B5判、ソフトカバー、48ページ
デザイン:加藤賢策(LABORATORIES)

2018年2月に東京・青山通りの特設会場で開催された会田誠氏による個展「GROUND NO PLAN」の図録。本展は「都市のヴィジョン」というテーマのもと、会田氏による都市論や都市開発プランが示され、建築・都市論の専門家の間などでも大きな話題を呼んだ。その図録である本書では豊富な会場の記録写真とともに、作家のプレゼンテーションの模様を採録したテキストを収録。

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ビル地下に出現した「原っぱ」──会田誠展「GROUND NO PLAN」(2018年03月15日号フォーカス)| 村田真

彫刻1:空白の時代、戦時の彫刻/この国の彫刻のはじまりへ

著者:小田原のどか、平瀬礼太、田中修二、千葉慶、金子一夫、迫内祐司、髙橋幸次、青木野枝、椎名則明、白川昌生、金井直、小谷元彦、山田亮太
制作・発行:トポフィル
編集:小田原のどか
発行日:2018年6月30日
定価:2,700円(税抜)
サイズ:四六判、ハードカバー、544ページ

彫刻とは何か?── 「空白の時代、戦時の彫刻」と「この国の彫刻のはじまりへ」の2つの特集を柱に、8本の書き下ろし論考、2人の彫刻家へのインタビュー、鼎談、詩を収録。 この国が孤立主義と軍国主義に落ちこんでいった時代と併走し、国家権力の流れを映し出した「彫刻」に光を当てる。 彫刻をめぐる叢書「彫刻 SCULPTURE」創刊号(次刊は2019年夏、刊行予定)。

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彫刻を見よ——公共空間の女性裸体像をめぐって(2018年04月15日号フォーカス)| 小田原のどか

インスタグラムと現代視覚文化論 レフ・マノヴィッチのカルチュラル・アナリティクスをめぐって

著者:レフ・マノヴィッチ
共訳・編著:久保田晃弘、きりとりめでる
発行:ビー・エヌ・エヌ新社
発行日:2018年6月26日
定価:3,500円(税抜)
サイズ:A5判、ソフトカバー、376ページ
収録論文:レフ・マノヴィッチ、甲斐義明、芝尾幸一郎、筒井淳也、永田康祐、ばるぼら、前川修、増田展大
図書設計・組版:杉山峻輔、桑田亜由子

現代の文化において大きな影響力を持ちつつも、これまでは写真論の対象としてほとんど語られてこなかったインスタグラム。『ニューメディアの言語』を著し話題を呼んだメディア理論家のレフ・マノヴィッチは、2012年から2015年にかけてインスタグラムにアップロードされた約1500万枚もの画像をデータ分析にかけることで、新しい写真論を築き上げました。

ブラジル先住民の椅子

著者:中沢新一、樋田豊次郎
発行:美術出版社
発行日:2018年7月20日
定価:2,223円(税抜)
サイズ:16×22cm、168ページ

東京都庭園美術館開催の「ブラジル先住民の椅子」展図録を書籍化! (中略)
日本初公開! 先住民の『椅子』だけに絞ったコレクション
ベイ・コレクションは、ブラジル先住民の椅子のみに特化した、世界最大規模のコレクションといえます。2018年現在、27民族渡る、350点を超える数の椅子のコレクションを所有。本展は、ブラジル国外で公開される初めての機会となります。メイナクの人びと手がけた動物を象った椅子を中心に、選りすぐった17民族からなる椅子コレクションをご紹介します。

[引用部分:Amazonより]
中崎透×札幌×スキー「シュプールを追いかけて」記録集

編集:中崎透
発行:札幌国際芸術祭実行委員会、札幌市
発行日:2018年2月20日
定価:1,852円(税抜)
サイズ:B5判、ソフトカバー、132ページ
デザイン:乗田菜々美

札幌国際芸術祭2017にて開催された現代美術作家・中崎透の展覧会「シュプールを追いかけて」の記録集。
「中崎は、冬や雪を楽しむ北国の生活、都市の発展とオリンピックとの関係、 札幌におけるスキーの歴史の一側面に着目しました。
展覧会では、スキーや雪山、1972年の札幌オリンピック冬季大会にまつわる展示物、リサーチにより集めたスキー板をはじめとした冬の道具を、直線の展示空間を生かし、年代を追って並べつつ、それにまつわる関係者へのインタビューを掲示することで、その道具や作品の年代にあった生活や人、時代を想起させます。生活する上でやっかいな雪と共存し、冬と常に向き合いながら成長をしてきた札幌という都市が持つ人間の工夫や遊び心の軌跡を、雪景色に刻まれたシュプールをたどるように体験できる空間を創出します」。

[引用部分:展覧会詳細ページより]
菅 木志雄 広げられた自空 l 分けられた指空性

編集・発行:小山登美夫ギャラリー
発行日:2018年5月25日
定価:4,167円(税込)
サイズ:A4変形、ドイツ装、136ページ(うち、カラー88ページ)、日英バイリンガル
寄稿:片岡真実(森美術館チーフキュレーター)
デザイン:加藤賢策、大井香苗(LABORATORIES)

『菅 木志雄 広げられた自空 l 分けられた指空性』展覧会カタログを小山登美夫ギャラリーより刊行致します。本展の最新作、及び昨年2017年に開催した個展「分けられた指空性」の作品、展示風景画像を掲載。また本作品集の為に、森美術館チーフキュレーター片岡真実氏に寄稿頂きました。

感性は感動しない─美術の見方、批評の作法

著者:椹木野衣
発行:世界思想社
発行日:2018年7月31日
定価:1,700円(税抜)
サイズ:四六版、ソフトカバー、208ページ

子供の絵はなぜいいの?絵はどうやって見てどう評価すればいい?美術批評家・椹木野衣は、どのようにつくられ、どんなふうに仕事をして生きているのか?絵の見方と批評の作法を伝授し、批評の根となる人生を描く。著者初の書き下ろしエッセイ集。

2018/07/15(artscape編集部)

露口啓二『地名』

発行所:赤々舎

発行日:2018/02/01

露口啓二は、昨年(2017)、福島県の原子力発電所事故にともなう「帰還困難区域」と「居住制限区域」を含む風景写真集『自然史』(赤々舎)を上梓し、高い評価を受けた。その彼の次の写真集は、1999年に開始され、中断を経て2014年に再開された「地名」シリーズだった。北海道各地で撮影された写真には、それぞれ「大誉地/Oyochi/o-i-ochi(川尻〈そこ〉に・それが・多くいる・ところ=river mouth.it.a lot of.place)」という具合に、和名の地名とその読み、その元になったアイヌ語の地名とその意味が付されている。いうまでもなく、露口がもくろんでいるのは、アイヌたちが暮らしていた土地を収奪して上書きした北海道の地名が孕む重層的な構造を、写真と「地名」を通じて暴き出すことである。併記された和名とアイヌ語を眺めているだけで、さまざまな感慨が湧き上がってくるのを抑えることができない。

さらに興味深いのは、「成人した人々の標準的と思われる視線の高さ」で撮影された場所を、少し時間を置いて「再度訪れ、同じ場所から前回の写真の右あるいは左を撮影」していることだ。写真集には、そうやって撮影された2枚の写真が並んでいるのだが、この操作も二つの地名と同様に、その「間」へと思いを導くために設定されているのではないだろうか。周到に準備され、細やかに達成された作業の集積によって、日本の風景を、写真を通じて読み解いていく新たな回路が生み出されつつある。『自然史』と『地名』を二つの柱とする露口の写真家としての営みが、今後、どのように大きく開花していくのかが楽しみだ。

2018/06/25(月)(飯沢耕太郎)

カタログ&ブックス│2018年6月

展覧会カタログ、アートにまつわる近刊書籍をアートスケープ編集部が紹介します。

Under 35 Architects exhibition 2018 OPERATION BOOK
35歳以下の若手建築家による建築の展覧会(2018)図録

発行:アートアンドアーキテクトフェスタ
発行日:2018年6月1日
定価:926円(税抜)
サイズ:A5判、ソフトカバー、164ページ
アートディレクション:平沼佐知子(平沼孝啓建築研究所)

今秋、うめきたシップホール(大阪)にて開催される「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会2018」の展覧会図録。
「これからの活躍が期待される 35歳以下の出展候補者を全国から募り、ひと世代上の建築家である「平田晃久」の厳正な審査を経て選出された建築作品の展覧会です。また、その出展作品の中から優秀な作品を選出し、Under 35 Architects exhibition 2018 Gold Medal賞 、Toyo Ito Prize(伊東賞)を授与します。本展は、これからの活躍が期待される若手建築家に発表の機会を与え、日本の建築の可能性を提示し、建築文化の今と未来を知る最高の舞台となるでしょう。」

[引用部分:展覧会ウェブサイトより]
YCAM BOOK

発行:山口情報芸術センター[YCAM]
発行日:2018年3月4日
定価:非売品(ウェブサイトより閲覧可能)
サイズ:A5判、ソフトカバー(紙製ケース入り)、48ページ
編集:桜井祐(TISSUE Inc.)+山口情報芸術センター[YCAM]
アートディレクション:大西隆介(direction Q)
イラストレーション:楢崎萌々恵

YCAMの活動を紹介する冊子「YCAM BOOK」が完成しました。この冊子は、YCAMの多岐に渡る活動をご紹介するものです。
冊子は、YCAMの概要を紹介する冊子と、2017年度ならびに2018年度の事業を紹介する冊子の2種類に分かれており、それらが組み合わされています。
編集は桜井祐さん+YCAM、アートディレクションは大西隆介さん、表紙などのイラストは楢崎萌々恵さんです。
僅かではありますが、館内で開催するイベントなどで配布する予定ですので、お見かけの際はぜひお手に取ってご覧ください。

シアターコモンズ・ラボ 2017-2018 レポートブック

発行:シアターコモンズ・ラボ事務局
発行日:2018年3月
定価:非売品(ウェブサイトよりPDFダウンロード可能)
サイズ:A5判、ソフトカバー、50ページ
執筆:シアターコモンズ・ラボ事務局(藤井さゆり、柴原聡子)、相馬千秋、濱野智史、小松理虔、カゲヤマ気象台、シアターコモンズ・ラボ参加者の皆さん(参加者の声)
編集:柴原聡子、藤井さゆり
アートディレクション&デザイン:加藤賢策(LABORATORIES)

2017年からスタートした新規人材育成事業「シアターコモンズ・ラボ─社会芸術アカデミー事業」。第1期(2017年度)のレポートブックが完成しました。1年間を通じて5つのラボとセミナーシリーズを開催、100名を超える受講者が演劇的発想を活用し、それぞれの問題意識をあらたな創作や企画に接続するワークショップに参加しました。その濃密な学びの時間を写真と文章で記録したレポートブック全50ページ。ぜひご覧ください。

ウェブサイトより]
トーキョーアーツアンドスペース アニュアル 2017

発行:公益財団法人東京都歴史文化財団東京都現代美術館トーキョーアーツアンドスペース事業課
発行日:2018年5月24日
定価:非売品(ウェブサイトよりPDFダウンロード可能)
サイズ:A5判、ソフトカバー、176ページ
編集:杉本勝彦、トーキョーアーツアンドスペース(伊藤まゆみ、市川亜木子、荻田果林、渡辺俊夫)
インタビュー:島貫泰介
表紙・インタビュー撮影:後藤武浩
デザイン:漆原悠一(tento)

トーキョーアーツアンドスペースの2017年度の活動をまとめた事業報告書。全国の美大や美術館のライブラリーなどでも閲覧可能。


HAPS事業報告書 2017年度

発行:東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)実行委員会
発行日:2018年3月31日
サイズ:A4判、ソフトカバー、28ページ
編集:松永大地
デザイン:坂田佐武郎、桶川真由子
写真:成田舞、前谷開、松見拓也

京都在住の芸術家たちの居住・制作・発表を包括的に支援する、東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)のアニュアルレポート。2017年度の活動報告だけでなく、HAPSの事業内容の詳細や支援アーティストの声なども紹介。


神戸スタディーズ#6「“KOBE”を語る GHQと神戸のまち」

制作・発行:デザイン・クリエイティブセンター神戸
発行日:2018年3月
定価:非売品(ウェブサイトより送料着払で送付申し込み可能/PDFダウンロード可能)
サイズ:B5判、ソフトカバー、48ページ
執筆・編集:村上しほり
アートディレクション:上田英司(シルシ)

「第二次世界大戦後の1945年9月からサンフランシスコ平和条約発効の1952年4月まで、GHQ(General Headquarters=連合国占領軍)に日本が占領されていたことをご存知ですか? 戦時下の神戸については、これまで長い時間をかけて少しずつ解明されてきました。しかし、戦後の神戸にGHQが駐留していたことや、その時期の暮らしに関する記憶は、十分には語り継がれておらず、いまだ知られていないことが多くあります。その主な理由は、神戸には当時の状況を記録した資料が限られてきたこと、そして、戦後の暮らしや“進駐軍”について語られる機会がなかったことにあるでしょう。」
神戸スタディーズ#6」として、デザイン・クリエイティブセンター神戸で行われたGHQ占領期の神戸のまちについてのレクチャーと、実際にそこに暮らした方々が語りあう公開ヒアリングのレポートブック。

[引用部分:発行元ウェブサイトより]
ARTEFACT 01 都市のカルチュラル・ナラティヴ/増上寺

発行:慶應義塾大学アート・センター
発行日:2018年3月12日
定価:無料(ウェブサイトより送料着払で送付申し込み可能/PDFダウンロード可能)
サイズ:B5判、86ページ
編集・企画:「都市のカルチュラル・ナラティヴ」プロジェクト(本間友、松谷芙美)
企画制作:Rhetorica(松本友也、太田知也、遠山啓一)
アートディレクション・デザイン:太田知也(Rhetorica)
協力:フランツ・ワクトメイスター(翻訳・アシスタント)、髙野明子(校閲)、田島遥(取材)

ARTEFACTは「都市のカルチュラル・ナラティヴ」のプロジェクト・マガジンです。
プロジェクトの活動を、レファレンスを追記した書き起こしやレポートなどによって記録するとともに、プロジェクトの活動に参加できなかった人でも、本誌を手にとることによって都市のカルチュラル・ナラティヴを知り、楽しむことができるような誌面作りを目指して、マガジンとしての企画記事も含めた構成をとっています。

海を渡ったニッポンの家具 豪華絢爛仰天手仕事 (LIXIL BOOKLET)

著者:菅靖子、門田園子、庄子晃子 発行:LIXIL出版
発行日:2018年6月20日
定価:1,800円(税抜)
サイズ:A4判変型、ソフトカバー、84ページ
写真:大西成明
アートディレクション:祖父江慎

明治時代、輸出用として作られた家具。欧州のジャポニスム流行の波に乗り、陶磁器や七宝、金工品などとともに日本の伝統的な美術工芸品の一つとしてもてはやされた。高度な手技と欧米向けにアレンジされた過剰な装飾でキッチュにも見えるデザインは、当時の輸出家具の特徴と言えよう。他の工芸品と比べ、国内に現存品が少ない中、本書では、珠玉の工芸家具を、寄木細工、芝山象嵌、青貝細工、彫刻家具、仙台箪笥の5つに分け、技法や背景、見どころと併せて紹介する。フォルムの面白さ、そして神業のような装飾などをたっぷりと堪能させてくれる写真家・大西成明による図版満載の一冊。

2018/06/15(artscape編集部)

第21回文化庁メディア芸術祭受賞作品展

会期:2018/06/13~2018/06/24

国立新美術館[東京都]

例年どおり冷やかし程度にしか見てないので、めんどくさい作品は通りすぎている。ずいぶん乱暴な見方だが、それで足が止まった作品はホメてあげたい。折笠良の《水準原点》はクレイアニメ。雪原か海原のような白い風景のなかをぐんぐん進んでいくと、ときおり津波のような高波が押し寄せる。なんだろうと見ていると、今度は同じ場所を斜め上から見下ろすかたちで映し出していく。なんと津波の中央では文字が生まれている、というより、文字が生まれる波紋で津波が生じているのだ。その文字をたどっていくと、シベリア抑留経験のある石原吉郎の詩「水準原点」になる。言葉の生成現場がかくも厳しいものであることを伝えるこのアニメも、かくも厳しい生成過程を経て完成したものだ。

もうひとつ、Gary Setzerの映像作品《Panderer(Seventeen Seconds)》はきわめてわかりやすい。映像のなかで男が観客に対し、「美術館で、平均的な鑑賞者がアート作品を見るのに使う時間は1作品につき約17秒であり、この映像作品はその制約を受け入れて17秒という理想的な鑑賞時間を正確に守っている」と語り、17秒で終わる。作品の内容と形式が完全に一致した「理想的」なアートになっているのだ。もちろん理想が必ずしもすばらしいとは限らないが。

2018/06/12(村田真)

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