artscapeレビュー

2013年09月15日号のレビュー/プレビュー

Unknown History

会期:2013/08/23~2013/09/04

アユミギャラリー+アンダーグラウンド+早稲田スコットホールギャラリー[東京都]

2011年8月、カトウチカの呼びかけにより始まったグループ展。今回で3回目、と思ったらなぜか4回目。毎回テーマを変え、民家を改装したギャラリーを中心に、地下2階のなんの変哲もない部屋、一駅隔てたレンガ壁のクセのあるホールと、あえて一筋縄ではいかない空間で作品を発表している。今回の全体テーマは「歴史」だが、優れた作品はテーマを超えるようだ。「ヤドカリトーキョー」もやってる門田光雅は、どんな場所であろうとおかまいなくコテコテのタブローを出している。よくも悪くもブレがない。荻野僚介もいつものような抽象画を出してるが、奇跡的にレンガ壁と合っている。高橋大輔は初耳だが、門田以上に分厚く絵具を載せたタブローで、ほとんどレリーフ状態。ここまでくるともはや場所を選ばない。絵画以外では、アンダーグラウンドのさらに奥の機械室みたいなとこで、マルチスクリーンに流動物の映像を流す町野三佐紀と、鉄カブトを並べて音を出す西原尚のインスタレーションが、場所ともども印象に残った。

2013/08/26(月)(村田真)

ダン・ペルジョヴスキ、ドローイング

愛知芸術文化センター 11階展望回廊[愛知県]

県議会議員があいちトリエンナーレの視察に訪れ、案内した。意外に長い時間をかけて見ていたのが、展望回廊のガラスに描かれたダン・ペルジョヴスキのドローイングである。なるほど、彼の作品は、社会や政治に対する皮肉を込めた言葉を読みとくことの面白さをもつからだろう。14日に一日の弾丸ツアーで、大村知事にあいちトリエンナーレの全会場を案内し、岡崎では内田市長・議員が合流したときも、政治家だけに、丹羽良徳さんの作品、マルクス195歳の誕生会と共産党へのインタビューに関心をもったことに通じる。
写真上:ペルジョヴスキのドローイング、下:丹羽良徳の作品

2013/08/26(月)(五十嵐太郎)

田中雄一郎「ATLAS BLACK」

会期:2013/08/24~2013/09/22

photographers' gallery[東京都]

田中雄一郎は1978年、埼玉県生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科在学中から写真作品を発表しはじめ、現在は九州産業大学大学院に在籍しながら精力的に個展などを開催している。今回、東京・新宿のphotographers' galleryのメンバーになることになり、年2回ほどのペースで展示することが決まった。写真家としての潜在能力の高さは、以前から注目していたのだが、コンスタントに作品を発表することで、さらなる飛躍が期待できそうだ。
今回展示された「ATLAS BLACK」は、2006~09年頃に東京とその周辺で撮影されたモノクロームのスナップショットのシリーズ。大伸ばし3点を含む24点の作品にどこか既視感を覚えるのは、それらが1960年代後半の森山大道、中平卓馬らの作品から脈々と流れる都市のストリート・スナップの流れに、ぴったりとおさまってしまうからだろう。ややカメラを傾けたアングルや、人工光への鋭敏な反応なども、どちらかと言えば目に馴染んできたものだ。そのことを特に否定的に捉える必要はないが、やはり「そこから先」を見てみたい気がする。路上に記された矢印や「国道15号」とい行った表記、廃車のボンネットの埃を指でなぞった落書きなど、グラフィックな要素をより強調するのも面白いかもしれない。
これから先は、2010年から撮影を開始したブラジルの写真や、カラー写真のスナップなども順次展示していく予定だという。photographers' galleryという絶好の環境を活かして、新作にも意欲的に取り組んでいってほしいものだ。

2013/08/27(火)(飯沢耕太郎)

セドリック・デルソー『ダーク・レンズ』

発行日:2013/9/13(金)

セドリック・デルソーの写真集『ダーク・レンズ』(エクスナレッジ)が興味深い。画像を加工し、映画『スターウォーズ』の世界が現実の都市に移植されている。ほとんどがドバイ、それとパリやリールが舞台だ(リカルド・ボフィルのSF的なポストモダン建築も登場)。ダースベイダーやファルコン号が、実際の風景に紛れてもあまり違和感を覚えないのは、もうわれわれが未来を生きているからなのだろうか。

2013/08/27(火)(五十嵐太郎)

富田菜摘展「おとなの大運動会」

会期:2013/08/26~2013/09/14

ギャルリー東京ユマニテ[東京都]

サラリーマンとか政治家とかコギャルとかにグルーピングされたレリーフの群像が、騎馬戦や二人三脚のかっこうで壁3面に掛けられている。表面は新聞(たまに雑誌)の広告写真を切り貼りしたもので、顔の部分は広告に登場する人の顔の寄せ集めで成り立ち、あっちこっち文字も読みとれるという仕掛け。サラリーマンの集団なら先頭の社長の顔にファーストリテイリングの柳井社長ら、女性主任に江角マキコらの顔写真がコラージュされ、ところどころ「ビジネス」「経営」といった言葉が踊っているといった具合だ。以前はこれを立体でやっていたが、立体だと「フォトモ」をはじめ類似作品があるし、レリーフのほうが表現の幅が広がりそう。でもこういうわかりやすい作品はすぐに消費されかねないので、「おもしろい」で終わらないようなヒネリや毒が必要かも。

2013/08/29(木)(村田真)

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