artscapeレビュー

松井沙都子「ブランクの住空間」展

2015年11月01日号

会期:2015/09/18~2015/10/04

Gallery PARC[京都府]

ギャラリーの展示室には、天板にカーペットとフローリング風のクッションフロアを貼り付けたテーブルに、1面ないしは2面の壁を取り付けた立体《ホームインテリア》が2点。他には写真作品と、壁材と木材と照明器具から成る壁掛け式の立体作品が出展されていた。展示の中心となる《ホームインテリア》は、規格化された現代日本の生活空間をシンボライズしたものだ。筆者自身、公団住宅(5階建ての団地)で人生の半分近くを過ごしてきたので、この作品が持つリアリティを心底から実感できる。快適だが薄っぺらい住環境、ルーツを喪失した根無し草、といったところか。しかし、そんな場所でも長く住むと愛着が湧くのが人間だ。本作を見て、図らずも自分の人生をプレイバックした。見た目は華奢で仮設的な作品だが、その背後にあるものは意外と重い。

2015/09/22(火)(小吹隆文)

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