artscapeレビュー
富田菜摘展 Wonder Orchestra
2017年09月01日号
会期:2017/08/03~2017/08/13
Bunkamura Gallery[東京都]
廃材を用いてユニークな動物のオブジェをつくる富田菜摘。Bunkamura Galleryでは3年ぶりとなるこの展覧会のテーマは、クラシック音楽などの演奏会が行なわれるBunkamuraオーチャードホールにちなんで、動物たちのオーケストラだ。弦楽器を担当するライオンやサル、クマ、ウサギたちのボディにはバイオリンやチェロ、マンドリン、ウクレレなど弦楽器の胴。頭や手脚には鍋やザル、空き缶など。弦を奏でる手の先、耳にはフォークやスプーン、トングが用いられている。吹奏楽パートの象の鼻はチューバやトランペット。ワニのぎざぎざした大きな歯はキーボードだ。鍋やボウル、スプーンやフォークは、ギャラリー向かいのカフェラウンジがリニューアルした際に廃棄されることになったもの。展覧会会場に合わせたテーマ設定ばかりではなく、オブジェの素材にもまたその場と関わりのあるものが用いられているのだ。廃棄物を作品に用いるアーティストは多いが、なかでも富田の素材の選びかた、使いかたは絶妙。細部を見るたびごとに「こんな廃材が使われているのか」という驚きと発見に満ちていて、見る者を飽きさせない。動物たちに付けられた名前にはそれぞれ愉快な由来がある。オブジェのほか、今回は同じテーマの水彩画も出品。とても楽しい展覧会だった。[新川徳彦]
関連記事
富田菜摘 展「平成浮世絵──役者舞台之姿絵」|SYNK(新川徳彦):artscapeレビュー
2017/08/04(金)(SYNK)