artscapeレビュー
酒井稚恵展─金魚のふん─
2017年09月01日号
会期:2017/07/22~2017/08/05
GALLERY GALLERY[京都府]
既製品の衣服や布地に手縫いを施して、もとの姿とはまったく違うオブジェをつくり出す酒井稚恵。本展でも赤いワンピースに黄色い糸を手縫いした有機的な形態のオブジェ《金魚のふん》を発表。それらを環状に並べて宙吊りにするインスタレーション行なった。また別室では、衣服のタグや、陳列時に貼られるシール、襟の補強材、包装材などを用いた小品も展示されていた。本展の作品は、彼女が2015年から始めた「ファストファッションシリーズ」の一環であり、素材はすべてファストファッションブランドの衣服を使用している。美しい作品の背景には、利潤追求のために必要以上の生産と廃棄が行なわれ、品質が後手に回り、労働力を買い叩く現場の姿が潜んでいる。酒井はその事実を声高に叫んでいるわけではない。しかし、作品の素材やアイデアを知った者は、現代社会のありように思いを馳せざるを得ないだろう。
2017/07/29(土)(小吹隆文)