artscapeレビュー
高村光太郎編訳『ロダンの言葉』展 編訳と高村光太郎
2017年09月01日号
会期:2017/07/01~2017/09/03
碌山美術館[長野県]
私用で安曇野へ出かけたついでに穂高の美術館に寄ってみる。ここを訪れるのは、高3のとき白馬に絵を描きに行った帰りに寄って以来、じつに45年ぶり。足しげく通うのもいいが、人生の初めのころに訪れた場所を終わりが近づいたころに再訪してみるのも、一生の短さを実感することができて格別の感がある。碌山美術館は30歳で早逝した明治期の彫刻家、荻原守衛(碌山)の彫刻や絵画、資料を集めた個人美術館。荻原と交流のあったの高村光太郎や中原悌二郎らの作品も所蔵している。いまも昔も彫刻にはあまり興味ないけど、当時17歳の多感な青年は、ツタのからまる教会のような建物と、夭逝の芸術家というロマンチックな2点セットに惹かれて入ったのだ。ていうか、70年代前半といえばまだ美術館が驚くほど少なかった時代だから、美術館と名がつけばとりあえず入っていたように思う。
ツタに覆われた碌山館の外観は45年前とまったく変わってない。記憶をたどると館内は自然光にあふれ、扉や窓も開けっぱなしで開放感があったような気がするが、半分当たっていた。そもそも美術館とはいえ昔の建築だけに密閉感がなく、自然光が入り、全体に明るい印象だ。木づくりの椅子や棚は年季が入っていて、初訪問時どころか約60年前の開館当初から、いやひょっとしたら彫刻家の生前から使っていたものかもしれない。敷地にはほかに杜江館、第1、第2展示棟、グズベリーハウスなどが建っているが、これらはまったく記憶にないので、徐々に増築していったものだろう。企画展「ロダンの言葉」は第1、第2展示棟でやっていて、高村光太郎編訳の初版本をはじめ、ロダン、光太郎、カミーユ・クローデルらの彫刻を展示。夏休みなのでそこそこ人は入っているが、おそらく企画展目的で来館する人は少ないだろう。
2017/07/30(日)(村田真)