artscapeレビュー

松岡亮「何も知らず、空で描く。」

2017年09月01日号

会期:2017/07/24~2017/08/05

福住画廊[大阪府]

松岡亮はミシンを用いて刺繍ドローイングを制作するアーティストだ。個展会場には手描きのドローイングと刺繍ドローイングが並んでおり、それらを見たときには、まず手描きのほうを制作し、それらをもとにミシンワークを行なっているのだと思った。また、彼の作品には童画のような奔放さがあり、ひょっとしたら手描きの作品は彼の子供が描いているのか、とも思った。本人に尋ねるとどちらも間違いで、すべて自分の手によるものであり、下描き無しに即興で制作している。彼のミシンワークは、まるで手描きのごとく自由に糸を操るのが特徴だ。制作風景の動画を見せてもらったが、両手で布を躍らせるように動かすと、刺繍の線が四方八方に広がっていく。彼のミシン使いはきわめて独特で、その様子を見たミシンメーカーの人は驚愕し、悲鳴(ミシンが壊れる!)を上げたそうだ。道具の既成概念を覆し、新たな創造の可能性を切り拓くアーティストは格好いい。筆者は松岡に「ミシンのジミヘン」の称号を捧げたい。

2017/07/24(月)(小吹隆文)

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