artscapeレビュー
第22回 岡本太郎現代芸術賞展
2019年03月15日号
会期:2019/02/15~2019/04/14
川崎市岡本太郎美術館[東京都]
416点の応募のなかから選ばれた25組の作品を展示。応募数は長期的には減りつつあるようだが、入選作を見る限り相変わらず中身が濃いので安心というか、ますます濃くなっているのが心配というか。そのうち読売アンデパンダン展の末期みたいになればおもしろいけどね。
今回、年齢を公表している入選者のなかに還暦過ぎが2人いる。これは喜ばしいことだ。多くのコンペが年齢制限を設けているなかで、年齢も国籍も問わないのは、表現の自由と多様性を確保するうえで欠かせない条件だと思う。そのひとり本堀雄二は、捨てられた段ボール箱で薬師三尊と十二神将をつくり、もうひとりの武内カズノリは、陶磁の人面と杉枝などによるインスタレーションを発表。どちらも自然の力や環境問題に目を向けており、なんか世代的に「気持ち」がわかるなあ。武内は特別賞を受賞。
岡本太郎賞を受賞した檜皮一彦は、積み上げた車椅子の山からLEDライトをランダムに照射するといういささか暴力的な作品を出展。壁には車椅子を必要とする人物の映像が流れ、かなりインパクトがあった。岡本敏子賞の風間天心は僧侶もやっているそうで、水引を施したお城のようにリッパな祭壇をつくり「平成」を弔った。これから平成ネタの作品が増えそう。特別賞の國久真有は、台の上にキャンバスを置き、周囲を巡りながら手の届く限り線を引くという公開制作を実施中。線は腕のストロークを表わす円弧となり、それが幾重にも重なって大きなキャンバスの中央に矩形の余白ができる。こうした「ストローク画法」はほかにもあるが、彼女はそれによって単なる偶然による絵画ではない、もう一段上の表現を目指しているようだ。同じく特別賞の田島大介は、未来都市のような超高層ビルの俯瞰図を遠近感を強調して描いている。いまどきパソコンで作図できるのに、紙にインクで細密に手描きするという愚直さに惹かれる。
賞は逃したが、捨てがたい作品に、大きなサンドペーパーに木の枝や石ころで風景画を描いた藤原史江の《森羅万象》がある。描かれているのは樹木や川辺など、その枝や石を採取した場所だそうだ。採取したもので採取した風景を描くという自己言及的な絵画であり、それをサンドペーパーを支持体にすることで、「描く」「書く」の元が「掻く」「欠く」行為だったことを思い出させもする。ただいかんせん作品として地味。
2019/03/02(土)(村田真)