2019年05月15日号
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artscapeレビュー

生誕130年 佐藤玄々(朝山)展

2019年03月15日号

会期:2019/03/06~2019/03/12

日本橋三越本館1階[東京都]

もう40年くらい前、なにかの用で日本橋三越本店に行ったら、売り場中央の吹き抜け空間にとんでもなく大きくてハデな彫刻が目に入り、思わず涙が出そうになった。なぜ涙が出そうになったのか思い出してみると、当時70年代末だったと思うが、もの派の呪縛で美術界が低迷し、銀座や神田の画廊を回ってもモノクロで貧相な作品にしか出会えなかった時期に、いきなりキッチュでアナクロでしかもダイナミズムにあふれた彫刻が目に飛び込んできたため、パニック状態に陥ってしまったのだ。いや、そんなもっともらしい理由ではなく、ただ異形の存在に圧倒されただけだったのかもしれないが、とにかく想像もしなかった表現に不意討ちを食らったのは事実だ。

そのとんでもない彫刻をつくったのが佐藤玄々(1888-1963)で、彫刻は《天女(まごころ)像》というそうだ。知らなかった。展覧会はこの天女像につながる1階の売り場フロアで開催。出品は天女像を含めて35点だが、高さ11メートルのこの巨大彫刻を除けばほとんど小品ばかり。初期のころは《達磨》《如来像》《観音像》など仏教彫刻が目立つが、1930年前後には大きなヒキガエルを重石のように彫った《冬眠》、木をタケノコに変えた《筍》、原寸大の《鼠》《子》など、橋本平八を彷彿させる秀作が並ぶ。ところが戦後は《天女(まごころ)像》に集中していたせいか、その派生物みたいな装飾的な動物像が増え、彫刻というより置物みたいな工芸的作品に堕していく。なぜ三越はこの彫刻家にこんなデカイ天女像を任せたのか、理解しがたい。いやそれより、なぜ彼はこんなとんでもない彫刻を実現することができたのか、不思議でならない。

2019/03/07(木)(村田真)

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