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KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023

2023年05月15日号

会期:2023/04/15~2023/05/14

誉田屋清兵衛ほか[京都府]

11回目を迎えた京都国際写真祭。コロナ禍も収束に向かいつつあり、京都を訪れる人がこのところ増えていることもあって、例年以上に観客も多く、盛り上がりを見せていた。だが一方で、本企画が抱えるさまざまな問題も目につくようになってきている。

全体を通して見て、展示企画のクオリティの高さは感じるものの、ファッション写真や広告写真を母体にしているものがやや多くなってきているように感じた。むろん、ファッションや広告の分野は写真表現の重要な一側面であり、それらをバックグラウンドとしていることを一概に否定すべきではない。だが、どうしても展示を小綺麗にまとめがちなところがあり、見せ方にこだわり過ぎる傾向もある。京都国際写真祭の特徴として、町屋、蔵、寺院など、従来のギャラリーや美術館とは異なる空間の特性を活かした展示が多いのだが、逆にスペースの特異性に引きずられて、作品があまりよく見えないということもあった(ココ・カピタンの大西清右衛門美術館での展示など)。そうなると、写真展示のあり方としては本末顛倒だろう。

とはいえ、屋久島の森の昼と夜の写真を対比的に構成した山内悠「自然 JINEN」(誉田屋清兵衛 黒蔵)、ピンク・フロイドの『狂気(The Dark Side of the Moon)』にのせて、1960~1970年代のウクライナの状況をコラージュ的に浮かび上がらせるボリス・ミハイロフ「Yesterday’s Sandwich」(藤井大丸ブラッックストレージ)などでは、会場空間とインスタレーションとが有機的に結合して、目覚ましい視覚的効果を生み出していた。「見た目」だけでなく「中身」にもきちんとこだわりつつ、写真の新たな鑑賞法を模索していく必要があるということだろう。もう一つ、これは昨年も同じことを感じたのだが、総合テーマとして設定されている「BORDER」が、個々の展示に反映されているようには見えない。企画全体のキュレーションのあり方も再考すべきではないだろうか。


公式サイト:https://www.kyotographie.jp

2023/04/29(土)(飯沢耕太郎)

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