artscapeレビュー
建築に関するレビュー/プレビュー
《とおり町Street Garden》《Peanuts》《森×hako》
[広島県]
前田圭介の案内で地元で手がけたプロジェクトをまわる。まず、《とおり町Street Garden》へ。商店街をまとめながら、電力会社と粘り強く交渉し、5年をかけて実現したもの。老朽化したアーケードを外し、鉄柱をいかしてステンレスワイヤーを垂らす。こうして商店街が明るい場所に変更した。足元に緑が点在するのも魅力的である。続いて訪れた《Peanuts》は、保育園の奥に増築された乳児保育施設だった。名前のとおり、ピーナツ状の輪郭にガラスをめぐらせるが、水平に走る木製のフレームが日射や視線を遮ったり、棚になったりする。ランドスケープと続く内外が曖昧になった内周部の扱いは、《後山山荘》の新しい縁側空間にも通じる。最後は彼の事務所も入る《森×hako》へ。道路側の看板を兼ねる自転車置き場が植栽に覆われて凄いことになっていた。1階は歯医者が入り、スリット状に中庭を挿入し、多孔的な空間のため、奥の個別診察室も明るい。階段を上って事務所へ。開口のフレームと木々が交互に続く眺めは不思議な奥行き感を出す。
写真:左上=《とおり町Street Garden》 左下2枚=《Peanuts》 右上2枚=《森×hako》 右下=前田事務所
2017/06/26(日)(五十嵐太郎)
村野藤吾の建築─世界平和記念聖堂を起点に
会期:2017/05/16~2017/07/09
広島市現代美術館[広島県]
(いまならスキャンダルになるであろう)コンペをしたものの結局、審査員が設計してしまった世界平和記念聖堂のドキュメントが面白い。村野のファサード案もいろいろダメ出しされていたのか。後半は、目黒などでも開催した模型展示だった。
2017/06/24(金)(五十嵐太郎)
《広島平和記念資料館》
[広島県]
本館は改修工事中だが、東館は展示がリニューアルされている。パノラマ的な風景写真、原爆投下の前後やその瞬間を表現する円形の都市模型へのプロジェクション、インタラクティブな映像・情報検索のシステムなど。悪くないけど、すごく良いわけでない。文字が多すぎるかな。
2017/06/24(金)(五十嵐太郎)
《おりづるタワー》
[広島県]
三分一博志が関わった《おりづるタワー》へ。古いビルのリノベーションで、丘を登って世界遺産のエリアを見下ろす展望台、スロープ+滑り台+階段などの空間体験がユニーク。前者は屋外だけど、天井が張り出すことで通常と異なる場に。後者はぐるぐる歩いて降りるのが楽しい(滑る子どもや大人も多い)。
2017/06/24(金)(五十嵐太郎)
名所絵から風景画へ─情景との対話(後期)
会期:2017/05/27~2017/06/25
三の丸尚蔵館[東京都]
久々に三の丸尚蔵館へ。大手町から皇居東御苑に入ると外国人が多くなる。皇居だから西洋人ばかりだと思ったら、中国人や韓国人も意外と多かった(言葉やファッションでわかる)。まあ日本に来るくらいだから反日は少ないだろうけどね。で、三の丸尚蔵館。昭和天皇の崩御後、国に寄贈された御物の保存・研究を目的に建てられたもので、当初は一般公開するつもりがなかったらしく(美術館などへの貸し出しを考えていた)、収蔵庫(約1000平方メートル)に対して展示室(約160平方メートル)は異様に小さい。だからひとつのテーマで展示するときも2、3回に分けることが多い。今回も3期に分けたうちの後期の展示。タイトルどおり、近世の名所絵から山水画、真景図、近代以降の風景画まで、風景画の変遷をたどっている。出品は江戸期の雲谷派による《唐土名勝図屏風》、明治期の石油の産出現場を描いた児玉果亭の《石脳油産地之真景》、山本森之助による印象派風の油絵《夾竹桃》、丸山晩霞の美しい水彩画《犀川の秋》など、珍しい絵ばかり計12点。数も少ないし、入場無料だし、みんな気楽に見ている。
2017/06/24(土)(村田真)