artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

大ガラパゴス展

会期:2009/02/06~2009/02/08

東京藝術大学千住キャンパス[東京都]

東京藝大音楽環境創造科の卒業・修了制作展。キャンバス内の教室や体育館を使って作品を発表したり、論文の要旨を公開していたが、昨年に比べると全体的に完成度が粗いといわざるを得ない。せっかく、外部の人に作品が見せられる機会だというのに、準備が間に合っていなかったり、解説文の日本語が不明瞭なため作品の鑑賞方法が分かりにくくなっていたり、詰めの甘さが目立ってしょうがない。どうやらホームで開催することの利点が裏目に出たようだが、「作品を見せる」ことに全力を注がない限り、アウェーで勝負することは到底かなわない。

2009/02/08(日)(福住廉)

風間サチコ 昭和残像伝

会期:2009/02/04~2009/03/14

無人島プロダクション[東京都]

版画家・風間サチコの新作展。炭鉱をモチーフにした版画作品やオブジェなどを発表した。「巣鴨プリズン」を取り扱った前回の個展に比べると、若干想像力が大人しくなっているのは否めないが、それは炭鉱の残像を追い求めて過去を掘削していくなかで硬い岩盤に突き当たったということなのかもしれない。もはや山本作兵衛のような作品が望めない今、必要なのはこの岩盤のありかを共有し、なんとかしてそこを突き抜けていく身ぶりを獲得することだろう。

2009/02/08(日)(福住廉)

国宝 三井寺展

会期:2009/02/07~2009/03/15

サントリー美術館[東京都]

琵琶湖を望む三井寺の寺宝を開陳する展覧会。頭頂部が尖りぎみの《智証大師坐像(御骨大師)》や文字どおり面妖な《新羅明神坐像》、たおやかな品性を醸し出す《如意輪観音菩薩坐像》など、門外不出の秘仏が公開されている。仏像好きにはたまらない。

2009/02/06(金)(福住廉)

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戦争と芸術III─美の恐怖と幻影─展

会期:2009.1.16~2009.2.5

京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ[京都府]

阪急大山崎から河原町に出て京阪に乗り換え、終点の出町柳からタクシーで京都造形へ。なかなか不便だ。飯田高誉渾身の企画「戦争と芸術」展も、3回目にして初めて見る。しかも最終日。今回は防衛省防衛研究所から借用許可を得た藤田嗣治《重爆》をはじめ、横尾忠則、宮島達男、古井智、山口晃、佐々木加奈子、大庭大介の出品。藤田作品は借用の努力と情熱は認めるが、正直いって肩透かし。逆に、この程度の(といってしまう)作品でも簡単に借りられないところに、いまだ日本の「戦争と芸術」の問題があるのでは。もうひとつ、藤田以外の作品を、展覧会名を伏せて見せたとき、はたして何人が「戦争」という主題に気づくだろうか。いいかえれば、戦争という主題に慣れない日本のアーティストを、われわれは誇るべきか、恥じるべきか。

2009/02/05(木)(村田真)

「さて、大山崎」山口晃 展

会期:2008.12.11~2009.3.8

アサヒビール大山崎山荘美術館[京都府]

のぞみで京都に出て、在来線で山崎へ。地理的にも歴史的にもネタに事欠かない大山崎に取材した山口の個展。《惟任日向守》《羽柴筑前》《千宗易》はそれぞれ地元ゆかりの明智光秀、豊臣秀吉、千利休の肖像画。秀吉の兜は栓抜きか。大作《最後の晩餐》では明智光秀ら武人が食卓を囲む。よく見ると、ワインやキッコーマン醤油も並んでる。いやアッパレ、あきれるほど見事。なにも考えずに見れば、桃山の重要美術品といわれてもうなずいてしまいそう。ビミョーなのは新館の「壁面見立」シリーズ。コンクリート打放しの壁の模様に「大鰐」「香炉峰」「沢蟹」などのパターンを見出し、スポットライトを当てて作品としている。さすがに新館まで新作で埋めきれなかった苦肉の策かと同情しかけたが、待てよ、これこそ大山崎ならではのサイト・スペシフィック絵画ではないか。先客のモネや安藤忠雄ともコラボしてるし。と感じ入ったしだい。

2009/02/05(木)(村田真)

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