artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

束芋 ハウス

会期:2008/12/20~2009/02/14

ギャラリー小柳[東京都]

束芋の新作展。ドールハウスをモチーフとしたアニメーション作品は、以前にも増して身体的な生理感覚を強く感じさせるもので、内側の痛みや痒みを洗い流すカタルシスを寓話的に表わしていた。皮膚を一枚一枚剥がしていき、めくれた内側の肉をさらに深くえぐり出すような、内触覚が大いに刺激される。その内側への志向性を一切の外側を欠いたドールハウスの中で見せているからなのか、小さな穴に引きずりこまれるような吸引力を発していた。その息苦しさが、同時代的な感覚なのかもしれない。

2009/01/21(水)(福住廉)

大原竜幸 展

会期:2009/01/12~2009/01/21

ギャラリイK[東京都]

人と獣が入り乱れた木彫りの彫刻。台座の上に自立的に屹立するのではなく、それぞれのフォルムが縦横無尽に連結させられているので、空間全体に人や獣が躍動する様子が効果的に演出されている。次はもう少し大きな空間で見てみたい。

2009/01/21(水)(福住廉)

ライオネル・ ファイニンガー展

[愛知県/宮城県]

愛知県美術館
会期:2008/10/17~2008/12/23
宮城県美術館
会期:2009/01/10~2009/03/01

すでに名古屋の展覧会で一度見ていたが、宮城に巡回したものを再び見る。ここにはクレーやカンディンスキーなど、ドイツ近代を扱う学芸員がいるので、ファイニンガーが来るのは順当といえる。ファイニンガーは一般的に、バウハウスの共同宣言の挿絵で光の大聖堂を版画で描いたことで知られ、愛知の常設でも展示されていたが、僕もそれくらいしか知らなかった。近代美術史の位置づけとしては、キュビスムの影響を受けた画家の一人なのだろう。彼は経歴が面白い。アメリカからドイツに行き、またアメリカに戻っている。もともとは風刺漫画を描いていて、その時から漫画的な空間のねじ曲げ方やデフォルメなど、ある種の抽象化の感覚はあった。ヨーロッパに移住し、キュビスムやドイツの近代美術、建築に影響を受け、バウハウスにも関わることになる。バウハウスの中世的な共同体志向は、彼の大聖堂の絵とも連動する。面白いことに、途中から橋やローマ時代の水道橋など、土木工事や建築を描くことが好きになり、人間を描かなくなる。都市や建築の風景が多くなり、画面が複数の光の層に分解して、クリスタル的な面となり、世界を再構成する。直接的な影響はないだろうが、ザハ・ハディドが香港のザ・ピークというコンペで全く違った形で街を極度に抽象化して表象しており、それと同じ意味で極めて建築的。
ハレというドイツの街から依頼を受け、しばらく大聖堂を描いているが、そのときは完全に独特の抽象世界である。彼がまだ見ぬニューヨークの摩天楼を抽象化したかのようだ。つまり、ファイニンガーはヨーロッパにおいて古い建物を見ながら、ヒュー・フェリス的な「明日のメトロポリス」を描いたといえる。退廃芸術だとされ、ナチスに追われた彼は、結局アメリカに戻り、無名な画家に戻ってしまう。ファイニンガーはクリスト同様、補助線の引き方がうまく、海に浮かぶ船の補助線をうまく描いたりしている。晩年、ニューヨークの絵などを描いたが、ハレの街を描いた30年代の方がよい作品である。摩天楼が出現する前にヨーロッパに渡り、アメリカに帰ってきたら摩天楼が出来ていた。

2009/01/21(水)(五十嵐太郎)

泉太郎「山ができずに穴できた」

会期:2009/01/20~2009/03/07

NADiff Gallery[東京]

本屋の地下にあるいびつな白い部屋、壁に映るのは人体のでたらめで、ユーモラスな運動。同一人物を撮影した紙が次々に手で引きちぎられてゆく動画は、下の紙の体と上のそれとがときに重なり、パラパラマンガに似て非なる原始的で奔放な動きを見せる。「ダンス」なんて言葉が不意に漏れてしまう魅力があった。壁の下に紙の残骸。プロジェクター台に半分隠れたテレビは、紙にプリントされた元の映像(壁に沿ったり壁を蹴ったりする泉)を映す。重層的な映像(「重ねた紙を上からちぎってゆく映像」=「運動する泉」+「それを映した映像」+「映像を映した紙」)を重層化のプロセスごと展示するやり方は、最近の泉らしいこだわりを示している。事が重層的になれば必然として、作家の思惑とその結果のズレは増加する。プロセスの開示はそのプロセスこそ主役なのだといいたいようだ。タイトルにある「~できずに」は、こうした思いのズレにこそ泉の関心があることを明かしている。

2009/01/21(水)(木村覚)

加山又造 展

会期:1/21~3/2

国立新美術館[東京都]

「裸婦」シリーズを除いて、どこがいいんだかよくわからない。たぶん一生いいと思わないだろうなあ。まるで別の世界だもん。

2009/01/20(火)(村田真)

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