artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

加藤チャコ「スローアートとオーストラリア」

会期:1/31

プロジェクトスペースKANDADA[東京都]

メルボルン在住のアーティスト、チャコさんの講演会。オーストラリアのエコロジカルでエフェメラルな「スローアート」を紹介。彼らは売るために作品をつくるのではないし、展示期間が過ぎれば作品はあとに残らないから、どうやって食っていくかが問題となる。これはある意味でプロのアーティストの否定であり、極論すればモダニズムへの挑戦である。そこまでいってないけどね。

2009/01/31(土)(村田真)

加賀美健「TOYS“A”SS トイズアス」

会期:2009/01/17~2009/01/31

タカ・イシイギャラリー[東京都]

展覧会のタイトルが示しているように、トイザラスへのオマージュなのか、アイロニーなのか、色とりどりの玩具を組み合わせたオブジェを発表。プラスティック製の玩具やぬいぐるみによって、性や暴力、排泄物などのテーマが強調されていたが、90年代後半以後の「かわいい」と「おぞましい」を同時に見出す言説でしかとらえられないところが、もどかしい。

2009/01/29(木)(福住廉)

寺田真由美 展

会期:2009/1/15~2/28

BASE GALLERY[東京都]

寺田真由美は1989年に筑波大学大学院の修士課程を修了後、主に立体作品を発表してきた。ところが2005年に発表された「明るい部屋の中で」のシリーズから、写真を制作の手段として使うようになってきた。モノクロームの画像に大きく引き伸ばされた、無機質だがどこか柔らかな手触りを感じさせる「部屋」の眺めは、よく見ると作り物であることがわかる。現実の空間ではなく、誰のものともつかない架空の「部屋」が設定されることで、作品を見る者は、そのイメージに自分自身の記憶や経験を重ね合わせて愉しむことができるのである。
今回の新作ではニューヨークのセントラルパークで撮影された実際の風景が、窓の外の景色としてはめ込まれている。さらに「部屋」には本や地図、桜のイメージなどが配置され、その住人の存在感がより強く感じられるようになってきている。そのことによって、これまではどちらかというと、内向きに、抽象的に傾きがちだった思考や感情の流れが、外に向けて開かれるようになった。これはかなり大きな変化であり、寺田の作品世界が次にどんなふうに広がっていくかが楽しみになってきた。
僕はもう少しダイナミックに、「部屋」の内と外との交流を図っていってもいいのではないかと考えている。不在の住人たちも、そろそろ帰宅してもいい頃ではないだろうか。

2009/01/29(木)(飯沢耕太郎)

Multiple Worlds

会期:2008/11/05~2009/01/31

ARATANI URANO[東京都]

淺井裕介、泉啓司、西村知巳によるグループ展。白い壁面を泥絵で埋め尽くした淺井が圧巻の展示を見せた。屋上へ通じる階段の汚れた壁を消しゴムで消すことで樹を描いた作品など、空間の使い方も抜群にうまい。

2009/01/27(火)(福住廉)

さて、大山崎~山口晃展~

会期:12/11~3/8

アサヒビール大山崎山荘美術館[京都府]

作品を見るとまずその画力に釘付けになってしまうのだけれど、新作の《大山崎交通乃圖(ず)》、初公開の《邸内見立 洛中洛外圖(ず)》、明智光秀を題材にした《最後の晩餐》など、今展ならではの作品群は見応えがあり、細部の描写も面白い。架空の地図に描かれた大山崎町の風景も、現実に存在しているような気がしてきてワクワクした。千利休作の茶室待庵があったり、山崎の合戦の地として知られる大山崎だが、丁寧な取材のもと制作されているのも展示から伝わってくる。大山崎町訪問時のエピソードを綴った日記マンガは制作裏話としての魅力もあり、読み進めていくうちにニヤニヤしてしまった。モネの《睡蓮》を展示した新館は展示が難しい空間と思われ、どんな作品が並ぶのか楽しみにしていたが、壁のシミやヒビが風景や動物に見立てられ、ライトでフレーミングされていた。そうきたか!と少し面食らった。個人的にはおしゃれな人だなあと思うが、この会場は見る人によって好みや感想が大きく分かれそう。

2009/01/27(火)(酒井千穂)

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