artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

女子美スタイル☆最前線

会期:2009.2.11~2009.2.15

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

女子美(短大も含む)の卒業・修了制作展。1階から3階まで全館を使ってるが、出品者が200人を超すのでキュークツそうだ。ま、このほうがスカスカより祝祭的だが。ファンシーな心臓、キモイ心臓を描いた大小島真木、ポップな色とかたちがうれしい榎本浩子、どこから出てきたのか頭足少女の小沢団子ら、やはり絵画ばかりに目が向くが、白井洋子のたたむと動物になるブランケット《MOKOMOUF》は、すぐに商品化できそうだ。コンドームを使った学生が約2名いたが、使い方が違いますよ。

2009/02/13(金)(村田真)

京都市立芸術大学作品展

会期:2009.2.11~2009.2.15

京都市立芸術大学、京都市美術館[京都府]

会場が随分離れているし、全学年が出品する大規模な展覧会なので学内と京都市美術館両方の展示を一日で見ようと思うと結構急がねばならない。けれど、やっぱり今年も最後は慌てるはめになってしまった。学内展の油画と日本画の展示棟は特に、全体的に見応えがありとても良かった。特に繊細さと物語を感じさせる世界をドローイングとペインティングで展開していた油画の松嶋由香利、その隣のスペースで発表していた山下春菜が印象に残る。また、版画科の修士2回生の森末由美子の展示も気になった。“アジシオ”や“食卓塩”の小瓶が並んでいて、よく見ると中には外側のラベル部分の文字と位置がぴったり重なるように、青で着色した部分がある。もともとの中身を一度全部瓶から出し、改めて詰め直しているようだった。関西弁で「これアホや~!」(良い意味で)と思わず笑ってしまう労作。ほかにも、天の部分をグラインダーで削って山並みのように並べた百科事典、ファー生地を裏表交互に引き出し、ボーダー状にしたベスト(?)などが展示されていたが、どれも作品に知性とユーモアを感じられてワクワクした。学内展はひとりの学生がひとつの教室を使っている場合が多いのでたくさんの個展を見ているような気分。それだけに、展示面での課題もあり、会場としては美術館よりもハードルが高いとも言えるけれど今年も充実した内容。見逃さなくてよかった。

2009/02/13(金)(酒井千穂)

佐々木加奈子 展「Okinawa Ark」/佐々木加奈子「Drifted」

佐々木加奈子 展「Okinawa Ark」
資生堂ギャラリー[東京都](2009/02/06~2009/03/01)
佐々木加奈子「Drifted」
MA2 Gallery[東京都](2009/02/13~2009/03/14)

2004年に「写真ひとつぼ展」の審査で初めて佐々木加奈子の作品を見た時、少女趣味のセルフポートレートという印象で、それほど面白いとは思わなかった。ところがそれから数年で、彼女は芋虫が蝶に変身するようにアーティストとして大きく成長し、凄みのある作品を次々に発表するようになった。器の大きさを見抜けないと、こういうことになる。言い訳するわけではないが、2006年に文化庁の芸術家海外研修でアメリカからロンドンに移り、ヨーロッパの伝統と革新性とが同居する環境に身を置いたことが、彼女に大きな飛躍をもたらしたのだろう。
今回の資生堂ギャラリー、MA2 Galleryの両方の個展とも、現在の彼女の関心の幅の広さと表現力とが充分に発揮されていた。「Okinawa Ark」は南米・ボリビアの「オキナワ村」を取材した映像・写真・インスタレーション作品。第二次世界大戦後、沖縄からボリビアに移住した人たちの子弟が通う小学校の普段着の佇まいを撮影した三面マルチスクリーン映像を中心に、佐々木自身が「少女」を演じる映像作品、一世から三世までの三世代にわたる家族のポートレート、さらに実物の木造の小舟のインスタレーションなどが、効果的に組み合わされていた。テーマになっているのは、戦争の傷跡を背負った移民という重いテーマだが、波間を漂う船のように揺れる映像など、彼女自身の身体性や生理感覚を通して表現されていることに説得力がある。
MA2 Galleryの「Drifted」では、より個人的な体験から導きだされたという印象が強まる。1Fに展示されているのは、アーティスト・イン・レジデンスで滞在したアイスランドで撮影された風景写真と、現地の新聞を折りたたんで作った紙の舟のインスタレーション。2Fには、暗闇の中を懐中電灯の光で照らして見る仕掛けの部屋が作られており、アイスランドやテキサスの荒涼とした大地を月世界に見立てた中に、Google Earthの広島市上空からの空撮写真なども含まれていた。両方の個展に「舟」が登場してくるが、そこにはあてどなく漂流しながら、過去と現在、自然と人間の世界、ある場所と別な場所を結びつけ、繋いでいこうとする彼女自身の姿が象徴的に投影されているように感じる。
そういえば、津田直も『漕』(2007)で「舟」のイメージを召喚していた。同世代(1976年生まれ)である佐々木加奈子もまた、神話的なシャーマニズムへの志向を作品に取り込もうとしているのが興味深い。

2009/02/13(金)(飯沢耕太郎)

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第12回文化庁メディア芸術祭

会期:2009/02/04~2009/02/15

国立新美術館[東京都]

毎年恒例のメディア芸術祭。昨年に比べて会場がコンパクトになっていたものの、例年どおりテクノロジー系のメディア・アートが幅を利かせていた。そうしたなか、ひときわ際立っていたのが、Mark FORMANEKの《Standard Time》という映像作品。木材を組み合わせて巨大なデジタルカウンターをつくり、時間の進行にあわせて、その数字を人力で組み替えていく様子を映し出すもの。原則的に一分以内に作業を完了させているけれど、たとえば「6」から「7」への作業はかなりハードで、その必死さが笑える。重労働を捨て去りながら身体感覚を限りなく延長させていくハイ・テクノロジー全盛の時代にあって、もう一度私たちの感覚を身体労働にシフトダウンさせる、傑作だ。

2009/02/13(金)(福住廉)

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高橋匡太展Roomers 特別イベント

会期:2009/02/01~2009/02/21

MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w[京都府]

南区へ移転したVOICE GALLERYへ。展覧会第一弾は高橋匡太展で、その特別パフォーマンス・イベントの日に出かけた。入口のドアを開けるとpfs、その奥にwという二つの空間がある。pfsでは、6名の若手作家による「冬景'09」という展覧会が開催中。展示を見た後に奥へ進んで、高橋匡太の映像インスタレーションのスペースへ。空間の中心あたりに吊られたスクリーン、床、壁面などに、男性と女性が動くシルエットの映像が浮かんでは消える。その中で、山中透によるサウンドと前田英一によるパフォーマンスのライブが行なわれた。最後に、観客一人ひとりにワインが注がれたところでパフォーマンスは終了したのだが、映像にもテーブルの上にワイングラスがあった。なにかストーリーがありそうな雰囲気の男女の映像自体に目がキョロキョロと動き、あれこれとドラマを連想してしまうのだが、6箇所に投影されるそれらの映像の交錯にくわえ、パフォーマンスと映像が交錯し、不思議な空間と時間が出現していた。

2009/02/11(祝・水)(酒井千穂)