artscapeレビュー

美術に関するレビュー/プレビュー

パラモデリック・グラフィティ at なにわ橋駅

会期:2009/01/19~2009/01/24(公開制作)、2009/01/25~2009/03/29(展覧会)

アートエリアB1[大阪府]

京阪電車「なにわ橋駅」の構内にオープンしたパブリックスペースに、パラモデルの巨大なインスタレーションがお目見えした。プラレールを使った作品ということで場所との相性は抜群。駅を利用するサラリーマンやOLなど普段はアートに縁遠そうな観客が多く、特に親子連れの反応が際立っていた。不特定多数の人が訪れるスペースだけに破損が気になるが、それもハプニングとして前向きにとらえるべきだろう。美術館やギャラリーとは明らかに違う、そして商業施設とも異なる性質を持った新スペースのポテンシャルが明らかになった。今後も是非アートプロジェクトを続けてほしい。

2009/01/25(日)(小吹隆文)

松山淳 個展 ダイエット菩薩「翻弄」

会期:1/13~1/25

立体ギャラリー射手座[京都府]

前回は、ファッションモデルが四天王像になった彫刻作品を発表していたが今回もインパクト強烈。Before、afterという水着姿の女性の二枚の写真が掲載された、すっかり見慣れた雑誌のダイエット広告そのままのイメージの2体の女性の像のモデルは薬師寺の日光・月光菩薩立像だという。さまざまな広告メディアに翻弄されるわれわれの姿を仏像というかたちで表現した作品。垂れ下がった耳やどこかありがたい顔の表情など、やはりベースは仏像なのだが、近づくと顔が森三中の村上に見える! 職人技と言える造形力にユーモアが光る。作品のファイルを見せてもらったが、謝罪会見する企業役員をモチーフにした金印など、以前の作品も気になった。次回の展開が楽しみだ。

2009/01/25(日)(酒井千穂)

島袋道浩「美術の星の人へ」

会期:2008/12/12~2009/03/15

ワタリウム美術館[東京]

「やるつもりのなかったことをやってみる」の文字が大きく白い壁に描かれてあって、それは、観客への作品案内のようで実は指令(インストラクション)。NYのビルボードに「WAR IS OVER」と掲げたオノ・ヨーコに似ているなと思う。ただし、島袋が観客に告げるのは、イマジンというより実感してみよ。例えば、上記した文字の下にはゴルフのできる囲いがあって、実際にスイングしてみよ、というのだ。美術館にないはずのゴルフ場で、思いもかけずスイングする経験。島袋は、観客に実行を誘い、自分もそれを実践する。イタリアでタコ壺を制作して現地の海で漁に挑み、また別の浜辺で自分を描いた等身大の凧を上空に揚げてみる。ほかにも、床に置いた箱がないはずの口でしゃべり出すとか、非常階段をめぐると象の背中を写した写真が見えて、さらに上ると不意に青山で象の鳴き声が響くとかがあった。本展覧会のために制作された写真集『象のいる星』は300円、普段は路上で『ビッグイシュー』を売るおじさんが美術館の出口で販売していた。話すはずのないおじさんと話し、買うはずのない『ビッグイシュー』も購入。今日の作家の大事な仕事は、こうしたちょっとした入れ替えの仕掛けをつくることにある?なんて思いながらぼくは帰りの電車で、象のいない青山の風景写真に象の存在を実感しようと写真集を繰った。
島袋道浩「美術の星の人へ」:http://www.watarium.co.jp/museumcontents.html

2009/01/25(日)(木村覚)

前田久美 展

会期:2009/01/17~2009/01/31

ギャラリー16[京都府]

展示室を埋め尽くす装飾過剰空間。スパンコール、エナメル生地、少女漫画、ぬいぐるみ、化粧品、フィギュア、etc...。そして何故かカエルの消しゴムコレクションがあり、目をモチーフにした不気味な自作オブジェも並置されている。別室には少女漫画『キャンディキャンディ』のラストシーンを思わせる平面作品も。妄想がこれでもかとばかりに詰め込まれた作品は、別室の平面以外はすべて2001年の作だが、今でも十分通用するまがまがしいパワーに満ちていた。

2009/01/24(土)(小吹隆文)

戦争と芸術III─美の恐怖と幻影─

会期:2009/01/16~2009/02/05

ギャルリ・オーブ[京都府]

真正面から「戦争」をテーマに据え、「戦争画」を出品する展覧会として過去2度の開催でも注目を集めた本展。3回目の今回も、藤田嗣治の《重爆》(1941)をはじめ、横尾忠則、宮島達男らの作品が揃い、見応えある内容となった。筆者としては、山口晃の疑似戦争画と、アンネ・フランクを想起させる主人公が登場する佐々木加奈子の写真・映像作品を見られたのが一番の収穫。戦争の記憶を隠すのではなく、公の場で議論すべきという本展の主旨には大いに賛成。むしろ公立美術館で開催すべきだと思うのだが、難しいんだろうなあ……。

2009/01/24(土)(小吹隆文)