2020年10月15日号
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artscapeレビュー

寺田真由美 展

2009年02月15日号

会期:2009/1/15~2/28

BASE GALLERY[東京都]

寺田真由美は1989年に筑波大学大学院の修士課程を修了後、主に立体作品を発表してきた。ところが2005年に発表された「明るい部屋の中で」のシリーズから、写真を制作の手段として使うようになってきた。モノクロームの画像に大きく引き伸ばされた、無機質だがどこか柔らかな手触りを感じさせる「部屋」の眺めは、よく見ると作り物であることがわかる。現実の空間ではなく、誰のものともつかない架空の「部屋」が設定されることで、作品を見る者は、そのイメージに自分自身の記憶や経験を重ね合わせて愉しむことができるのである。
今回の新作ではニューヨークのセントラルパークで撮影された実際の風景が、窓の外の景色としてはめ込まれている。さらに「部屋」には本や地図、桜のイメージなどが配置され、その住人の存在感がより強く感じられるようになってきている。そのことによって、これまではどちらかというと、内向きに、抽象的に傾きがちだった思考や感情の流れが、外に向けて開かれるようになった。これはかなり大きな変化であり、寺田の作品世界が次にどんなふうに広がっていくかが楽しみになってきた。
僕はもう少しダイナミックに、「部屋」の内と外との交流を図っていってもいいのではないかと考えている。不在の住人たちも、そろそろ帰宅してもいい頃ではないだろうか。

2009/01/29(木)(飯沢耕太郎)

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