2018年06月15日号
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artscapeレビュー

佐久間里美「In a Landscape」

2013年06月15日号

会期:2013/04/20~2013/05/26

POETIC SCAPE[東京都]

佐久間里美は、大阪のPort Gallery Tや東京のMUSEE Fなどで個展を重ねてきた写真家。日本大学芸術学部美術学科で油画を専攻していたという経歴にふさわしく、風景を色面で分割して抽象画を思わせるパターンで構成する作品を発表してきた。これまで、その画像構築のセンスのよさに注目してきたのだが、今回の個展では、作品世界をそこから一歩先に進めていこうとする強い意欲を感じとることができた。
新作の「In a Landscape」では、色面による構成だけではなく、画像の一部が歪んだり、奥行きを感じさせたり、薄膜がかかったようにぼんやりと霞んだりする、さまざまな視覚的な効果が駆使されている。一見すると、多重露光や画像合成のテクニックを用いているようだが、それらはすべて「写真の作法にこだわったストレートな一発撮り」で撮影されているのだという。おそらく、実像と水面や鏡面に写り込んでいる反射像とを、巧みに画面に配置してカメラアングルを決め、シャッターを切っているのだろう。
その視覚的効果はめざましいものがあり、これまでのスタティックでスタイリッシュな都市の風景写真というイメージは完全に一掃されている。ただ、方向性としては間違っていないと思うが、それが画像構築のための手段いうことだけに留まるとすれば問題があると思う。絵画の素養を活かした視覚的効果ということで言えば、例えばゲルハルト・リヒターにかなうはずがない。何を、なぜ撮るのかという心理的な動機の部分をもう少し掘り下げ、画面の中にさらに「思いがけない何か」を呼び込んでもらいたいものだ。

2013/05/11(土)(飯沢耕太郎)

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