artscapeレビュー

藤田美智「ここではない どこかへ」

2013年08月15日号

会期:2013/07/10~2013/07/15

Gallery Ort Project[京都府]

京都を拠点に活動している陶芸作家、藤田美智の個展。私が藤田の作品に初めて出会ったのは、2012年春の京都府庁旧本館(重要文化財)一般公開に際して開催された「ECHO TOUR 2012」という展覧会。その若い作家達による手工芸品の展示販売コーナーで、女性の頭部と身体をモチーフにした徳利状の花器《頭から花》という藤田の小さな作品を見つけた。ふくよかな顔と黒目のない表情、デザインのユニークなインパクトに惹かれてひとつ購入。以来、個展が開催されるのを楽しみにしていたのだが、これまではグループ展などで小品を出品しているのしか見たことがなかった。今展でも小さな作品が並んでいるのかと思ったら、意外にもメインだったのは両手でやっと抱えられるというくらいの大きめの陶芸作品。寝転がったり逆立ちしていたり、いろいろなポーズをとる水着姿のぽっちゃりした人形が、茶の間の雰囲気に設えられた空間にインスタレーションされていた。《妄想浮遊》《死んだように…》《見方を変えてみる》など、作家の心のつぶやきのようなタイトルと照らし合わせながらそれぞれのポーズや表情を見るのが面白い。疲労感や倦怠感もたびたび抱える生活のなかで、夏休みの過ごし方を一人ぼんやり考えて楽しむような日常感に溢れた空間が心地よかった。


展示風景

2013/07/15(月)(酒井千穂)

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