2018年12月01日号
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artscapeレビュー

阿部淳「市民・黒白ノート・黒白ノート2」

2013年08月15日号

会期:2013/07/29~2013/08/04

プレイスM[東京都]

阿部淳は自らが主宰するVACUM PRESSから、『市民』(2009)、『黒白(こくびゃく)ノート』(2010)、『黒白ノート2』(2012)の3冊の写真集を刊行している。だが、『市民』と他の2冊では写真を選択・構成するやり方が違ってきているようだ。『市民』では「都市の人々という具体的で明解なまとまり」を志向しているのに対して、『黒白ノート』『黒白ノート2』では「写真が形になる、生成の途上に一瞬偶発的に起きる写真的経験」を浮かび上がらせようとしている。そのために『黒白ノート2』を編集するにあたって、「(2000年までの)20年間のコンタクトから、その意識でセレクトし直し、今のところ600点ほどのプリントを」仕上げたのだという。
このような、スナップショットそのものの成立のあり方を問い直すような作業は、あるようであまりないのではないだろうか。結果として、『市民』『黒白ノート』『黒白ノート2』と進むにつれて、以前のくっきりと被写体を定着したような完成度の高いスナップショットが、より曖昧で未分化な場面をすくい取った画面に変質しようとしている。今回の第25回写真の会賞受賞展では、3冊の写真集からアトランダムに抽出されたプリント200点以上が、壁全体に撒き散らすように貼り巡らされており、阿部の真摯な探求のプロセスを辿ることができるようになっていた。黒く塗りつぶされたような影のパートから、不意にぬっと姿をあらわす「都市の人々」のたたずまいが、何とも不穏で暴力的だ。この探求がこれから先どのように展開していくのかを、しっかり見届けていきたいものだ。
なお階下のM2ギャラリーでは、写真の会賞を同時受賞した松江泰治の新作映像作品「jp0205v」が展示されていた。こちらも面白い作品だ。写真(静止画像)の画面をスクロールするように動画で撮影することで、スリリングな視覚体験を創出している。

2013/07/29(月)(飯沢耕太郎)

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