artscapeレビュー
原田裕規「心霊写真/ニュージャージー」
2018年04月15日号
会期:2018/03/09~2018/04/08
Kanzan Gallery[東京都]
原田裕規の「心霊写真/ニュージャージー」展は2つのパートから成る。「心霊写真編」では、テーブルの上に、清掃・リサイクル業者が回収したものだという数千枚に及ぶスナップ写真やネガの束が雑然と積み上がっていた。さらに、そこから「心霊写真」というコンセプトで選ばれて、「ひけらかす」ようにフレーミングされた写真が、壁に掛けられている。ほかに、「スマートフォンのネガポジ反転機能を用いることによって、現実と虚構が反転」するようにセットされた画像、「黄ばみ」を人工的に吹きつけたフェイク写真、「どちら側から見ても『裏側』の写真」なども展示されていた。
一方「ニュージャージー編」は、原田自身がアメリカ・ニュージャージー州で撮影した写真をわざわざ古くさくプリントし、「自ら発見したもの found-photo」と見なして展示している。そこに作者の気持ちを想像して書いた「通信」を添えることで、「架空の作者」を立ち上げるという試みである。
このところ、無名の作者による「ヴァナキュラー写真」や偶然発見した「ファウンド・フォト」をアートの文脈で再構築するという作品をよく目にする。手法のみが上滑りする場合も多いのだが、原田はコンセプトをきちんと吟味し、手を抜かずに作品化しているので、細部までよく練り上げられた展示として成立していた。不可視の対象が写り込む「心霊写真」は写真の鬼子というべき領域であり、やり方次第では従来の写真表現、鑑賞のプロセスを文字通り「裏返す」ことが期待できそうだ。手法をより洗練させて、可視化と不可視化を往復するようなプロセスを、さらに徹底して追求していってほしいものだ。
2018/03/15(木)(飯沢耕太郎)