2018年01月15日号
次回2月1日更新予定

artscapeレビュー

デザインに関するレビュー/プレビュー

竹中大工道具館 常設展

竹中大工道具館[兵庫県]

2014年秋に移転して、展示を大きくリニューアルした竹中大工道具館。地下が展示会場となる新しい建物には、伝統的な日本建築に用いられている職人芸が随所にちりばめられている。いわば、ミュージアムそのものが過去から現在に至るまでの建築技術を伝える場となっているのだ。美しい木のドアを入って驚くのが、ロビーのダイナミックな天井。国産杉の無垢材を用いて、船底に用いられる組み上げ技術を応用している。中庭には地元/淡路の敷瓦が使われ、土壁を鏝で削り出した壁や、鍛冶が鍛えた館内の案内サインには手仕事の跡が光る。展示物もまた規模が大きくなり増えた。唐招提寺金堂の実物模型や、茶室のスケルトン模型、千代鶴是秀の鍛冶場の再現など迫力たっぷり。大工道具のみならず、建築技術を駆使して作られた実物があるのは、鑑賞者にはやはり見応えがある。実際に見て、触って、木の香りも嗅ぐことのできる五感を活かした展示が同館の特徴。敷地内には美しい庭と茶室もある。未来の世代に継承すべき木の文化、大工の技、それらの伝統と最新技術の発展形を子供と楽しむことができる、またとない場所である。[竹内有子]


茶室のスケルトン模型

2017/07/01(土)(SYNK)

田嶋悦子展 Records of Clay and Glass

会期:2017/06/10~2017/07/30

西宮市大谷記念美術館[兵庫県]

陶芸とガラスを組み合わせ新たな造形表現を追求する作家、田嶋悦子(1959年大阪市生まれ)の個展。1980年代の新進作家選抜展「アート・ナウ」に出品された《Hip Island》の陶による巨大なインスタレーションの再現展示は、色鮮やかでポップな表現が楽しい。イタリアの反デザインの旗手/エットレ・ソットサスの《巨大な陶器》(1967年)を想起させる。大きな違いは、田島のモチーフが植物の生命を表す造形であること。1990-2010年代にかけての《Cornucopia》シリーズに見られる、どこか古代の幾何図形を思わせるようでいて有機的な陶の形状とそこに接合される、美しい鋳造ガラスの大胆な造形には目を瞠らされる。作家はこの連作で、通常はやきものの表面を覆うガラス質の釉薬を、ガラスのパーツとして置き換えて造形する手法を確立したという。近作の《Flowers》では、陶でできた黄色い花々の群生に、空に向かって伸びる雄蕊のような透明ガラスのパーツが印象的だ。最新作のインスタレーション《Records》(左上図版参照)には、アジサイの葉が転写された陶に、板ガラスが挟み込まれる。室内には100以上のパーツからなるアジサイの葉が並ぶ。鑑賞者が動くたびに、影と光の反射で作品の表情が刻々と変わる。有機的な生命感を伝え、素材の特性を活かした繊細で透明感のある、立体造形としてのやきものに魅了された。[竹内有子]

2017/07/01(土)(SYNK)

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超絶記録!西山夘三のすまい採集帖

会期:2017/06/09~2017/08/22

LIXILギャラリー大阪[大阪府]

建築学者/西山夘三(1911-1994)の都市における「庶民住宅」研究の様相を、彼が残した調査資料から探る展覧会。西山は京都帝国大学建築学科入学から院生時代以来、建築計画に加えて「住宅の科学的、社会的考察」を目的として、積極的に町歩きを行った。彼はカメラを携えて大阪、京都、名古屋を巡り、綿密な住居データを採集、記録した。フィールドワークによって、庶民の生活方式のあらゆる面を把握しようとする彼のスケッチには、考現学的思考も垣間見えて面白い。戦前から戦後の住宅難の時代にかけて、実地調査の範囲は、民家、町家、農家、長屋住宅、借家建築など多種にわたる。展示される「住み方調査」の原簿と集計データ、日記やスケッチ等の膨大な記録を見ると、彼が庶民の生活様式を把握していかに実証的な研究を行おうとしていたかがわかる。その克明な記録の山は驚くほど細かく分類され、体系化されてもいる。パソコンなどない時代、彼の手書き記録の迫力に圧倒される。一時は漫画家を目指したほどの腕をもつ西山のこと、そのスケッチの技量にも唸らされる。本展では、彼が描いた調査対象の建物図面を鑑賞者がめくって見ることができるように展示が工夫されている。なにより、住居改善に携わった彼の研究態度の根底には社会主義思想があり、それがこれほどまでの精力的な活動の原動力になったことを思うと、感動を覚える。[竹内有子]

2017/07/01(土)(SYNK)

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ジュリアン・レノン写真展 「CYCLE」

会期:2017/06/23~2017/09/17

ライカギャラリー京都[京都府]

ミュージシャンのほか、写真家としても多方面に活躍するジュリアン・レノン(ジョン・レノンの長男、リヴァプール生まれ)による写真展。展覧会名「Cycle」は、「進化を遂げながら巡り続ける生命の循環」を示しているという。これを統一テーマに、ライカギャラリーの3つ(東京・京都・GINZA SIX)では同時に、彼が東南アジアを旅してライカで撮影した写真が少しずつ異なるサブテーマのもとに展示されている。京都では、風景、人々の暮らしの様子が、「川」の情景を巡って展開される。15点中、1点を除き、写真はすべてモノクロ。写しだされるのは、川を通じて営まれる名もなき人々の日常の暮らしである。水上生活者と思しき人々やボートを漕ぐ人々の様子、川沿いの建築物など、そのどれもが喧騒に溢れていそうな場面なのに、とても静謐で詩的に見える。撮影対象は崇高とも換言できそうな、しかもそれが過剰過ぎないイメージで現れる。写真家の眼はそれほど異文化、ひいては人間の生に対する共感に満ちている。もうひとつ触れておきたいのが、この京都のギャラリーのユニークさ。築100年を超える町屋の2階、古い木材の梁と柱の構造をそのまま活かした展示室は、写真文化の奥深さを物語るに相応しい。[竹内有子]


ライカギャラリー京都

2017/07/01(土)(SYNK)

新いけばな主義

会期:2017/06/24~2017/07/02

BankART Studio NYK3F[神奈川県]

「気鋭の現代いけばな作家が集結!」「現代いけばなの歴史的展覧会」「平成のいけばな史に残るであろう本展」と、力の入った文言がチラシに踊る。流派を超えて集ったいけばな作家は計27人。うち草月流が10人、小原流が5人、龍生派、未生流、古流松藤会、一葉式いけ花などなんらかの流派に属しているのが8人、フローリスト、フラワーアーティストなどインディペンデントが4人という内訳。一人にあてがわれたスペースは、不公平にならないようにグリッド状に並んだ柱から柱まで5×5メートルの空間に統一されている。
さてその作品だが、「新」とつくからには花瓶や水盤に生ける古風な花なんぞ期待してはいけない。ベニヤ板を重ねたり、ナスを漬けたり、花びらを水に浮かべたり、およそ植物を素材にしたものならノープロブレム。しかしいけばなとして見れば新鮮かもしれないが、現代美術として見れば特に目新しいものでもなく、既視感はぬぐえない。グランプリは、これはなんという植物だろう? 肉厚の巨大な葉を重ねて龍の姿に仕立てた原田匂蘭が獲得。しかしよく見ると、グランプリの対象になるのは公募による審査を通過した12人だけで、残り15人は招待作家なのだ。これはいわゆる公募団体展と同じやり方ですね。まあ小原流も龍生派も未生流も宣法未生流も古流松應会も古流かたばみ派も、家元が出してるから落とすわけにはいかず、あらかじめグランプリの対象から外したのかもしれない。どうでもいいけど。

2017/06/30(金)(村田真)

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