artscapeレビュー

2012年09月15日号のレビュー/プレビュー

福山竜助「薄明かりの風景」

会期:2012/08/04~2012/08/26

トーキョーワンダーサイト本郷[東京都]

影絵のような作品。薄く溶いた絵具を虹色に地塗りし、その上から黒い絵具で植物や動物や波のような装飾模様を描いていく。よく見ると、錯視の図形のように子どもの姿が浮かび上がってくるものもある。10点ほどの作品はすべて同様のパターンで、額縁もシンプルな黒に統一してある。オリジナル度は高いが、こればっかり見せられてもなあ。

2012/08/26(日)(村田真)

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にっぽんど真ん中祭り

会期:2012/08/24~2012/08/26

久屋大通公演会場、大津通パレード会場ほか[愛知県]

名古屋の久屋大通公園会場にてどまつりを体験したが、人工的につくられた現代の祭りとしてよくシステムが出来ている。セミファイナル、ファイナルなどの段階が設けられ、卒計日本一戦との共通点もある。東海圏だけではなく、北海道、大阪、京都、長野のほか、仙台から宮学/MGのチームも踊りにきていた。セミファイナルになると、それまでのパフォーマンスのレベルにばらつきがなくなり、さすがに各ブロックの二位通過は迫力がある。ダイナミックな動きに統一感があり、もっとも良いと思った「笑゛(じょう)」が、大賞を受賞した。ともあれ、全体に共通する、日本人によるネオジャパネスクの感覚、郷土愛の雰囲気、気合いと根性は、まさにヤンキー的なものである。その直後、アートラボあいちにて、アーティストによる自主運営ギャラリーGOHONの2年間の活動を振り返る展覧会のオープニングに顔を出したのだが、やはり全然人種が違う。

2012/08/26(日)(五十嵐太郎)

Unknown Life

会期:2012/08/23~2012/09/05

アユミギャラリー+アンダーグラウンド+早稲田スコットホールギャラリー[東京都]

藍画廊とギャラリー現でも「UNKNOWNS」という展覧会やってたし、アート界で「アンノウン」は流行なんだろうか。50すぎのオヤジは「アンノン族」を思い出すが。こちらは昨年8月にカトウチカの呼びかけで始まったシリーズ展で、今回が3回目。3.11以降の予測できない未知の世界に踏み出していこうとの思いが込められているようだ。今回は神楽坂と早稲田の3カ所を会場に計18人が参加。会場ごとに「Body 身体」(アユミギャラリー)、「Travel 旅・変容・変化」(アンダーグラウンド)、「View 視界」(早稲田スコットホールギャラリー)とテーマを分けている。どこも民家だったりホールだったり、もともとアートスペースではない点が展示の難しいところであり、またおもしろいところでもあるのだが、壁をはうツタをプリントしたカーテンを窓に設置した石井香菜子を除いて、場所性を意識した作品は意外に少なかったなあ。わりとキマジメな作品が多いなか、キャンバス上辺の余った布を耳のように突き出した《いかり猫》や、キャンバスから布を上半分脱がせて木枠を滑らかに削った《ヌード2012》などの「絵画」を出した原游は、「シュポール/シュルファス」もズッコケるほどスットボケている。

2012/08/28(火)(村田真)

マウリッツハイス美術館展──オランダ・フランドル絵画の至宝

会期:2012/06/30~2012/09/17

東京都美術館[東京都]

本日のねらいはもちろんフェルメールの《真珠の耳飾りの少女》。これだけを見るために朝10時半ごろ行ったら、すでに入館まで20分待ちの行列。入ってからも《真珠の耳飾り》の前には長い行列ができていて、ご対面まで30分待ち。こうして1時間近く待ったあげく間近に見られたのは10秒足らず。でも額縁までしっかり見てきた。帰るころには入館までの行列がほとんどなくなっているではないか。早けりゃすいてるってわけじゃないんだね。

2012/08/29(水)(村田真)

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「東京都美術館ものがたり」展

会期:2012/07/15~2012/09/30

東京都美術館[東京都]

都美術館の誕生から現在まで86年の歴史を振り返るリニューアルオープン企画。大正時代、美術館の建設資金100万円(現在の32億円相当)を東京府にポンと寄付した九州の実業家・佐藤慶太郎から、都美術館を方向づけた東京美術学校校長の正木直彦、旧館の設計者・岡田信一郎、新館の設計者・前川國男らが紹介され、図面やマケットも並んでいる。旧館を知る者(50歳以上)にはなつかしい展示だ。かつてこの美術館に飾られた佐伯祐三、岡本太郎、赤瀬川原平、舟越桂、日比野克彦ら有名美術家の作品も展示されている。あれ?南嶌金平ってだれだろう、絵も地味だし……と思ったら、美術評論家の南嶌宏氏の父上で、長年小学校の教師をしながら都美術館の公募展に出品し続けた「無名の一画家」だという。都美術館を支えたのは幾多の公募展であり、公募展を支えたのはおびただしい数の無名のアマチュア画家だった。南嶌はその代表として晴れて出品となったわけだ。

2012/08/29(水)(村田真)

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