artscapeレビュー

2015年08月15日号のレビュー/プレビュー

アートと都市を巡る 横浜⇔台北

会期:2015/07/24~2015/09/13

BankARTスタジオNYK[神奈川県]

2005年から、横浜のBankARTと台北のアーティストヴィレッジが相互に送り出したアーティストを受け入れる交換プログラムをスタート。その10年を記念して計21組のアーティストの作品を展示。当時つくった作品を出すものもいれば、新作をつくるものもいる。圧巻はオフニブロール(高橋啓祐+矢内原美邦)による壁2面を使った横長の映像インスタレーション。白い両端から人のかたちが中心に向かって吸い込まれていく映像だが、壁が直角に折れ曲がった中心部は赤。つまり会田誠の《ジューサーミキサー》のように人が巻き込まれて血に染まっていく色であり、それは日の丸をも意味する。先日見た村田峰紀の作品と並んで印象深い日の丸だ。台湾では陳妍伊(チェン・イェンイ)の変貌ぶりに驚く。彼女は横浜に来たときキモノに興味を持ち、和服の一部をサンプリングした工芸的ともいえる作品を発表していたが、今回は監視カメラをつくって街中に設置した写真を出している。ずいぶん社会意識が高まったようだ。どちらも第1回目のアーティスト。2回目に派遣された東野哲史は作品を出さず、3カ月間の台湾滞在中に記した日記を丸ごと壁2.5面に書き写した。これはこれで壮観だが、台湾の人が読めないのは残念。

2015/07/24(金)(村田真)

国際交流基金巡回展「3.11──東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展

2012年3月から3年間、世界各地を巡回した「3.11──東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」展のセットの一部が、東北大学に到着した。報告書によれば、全部で20カ国、37都市で展覧会を開催しているが、模型やパネルなど、思っていたよりも傷みが少ない。なお、片平の仮設校舎で最初の展示がスタートし、青葉山の新校舎に戻ってきたわけで感慨深い。しかも、東北大学の復興プロセスも展示に組み込まれている。

2015/07/24(金)(五十嵐太郎)

「アートと都市を巡る横浜と台北」展

会期:2015/07/24~2015/09/13

BankART Studio NYK[神奈川県]

BankART1929で打ち合せの後、「アートと都市を巡る横浜と台北」展を見る。同施設の台湾との交流レジデンス・プログラムの集大成であり、日本と台湾の作家が参加している。2003年のキリンアートアワードで選んだ東野哲史の毎日ビールを飲む記録、アーツチャレンジで選んだ伊佐治雄悟も幾何学的な作品を出している。

写真:上=伊佐治雄悟の作品、下=東野哲史の作品

2015/07/25(土)(五十嵐太郎)

読売日本交響楽団 第81回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

横浜みなとみらいホール[神奈川県]

ブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」は二楽器の独奏がある面白い曲だが、ヴァイオリンはあまり迫力なかった。先月の「シェラザード」、あるいはベタな楽曲が多かったものの、フィリアホールで聴いた同楽団の日下紗矢子の演奏が印象的だっただけに、気になる。もうひとつが、ホルストの組曲「惑星」作品32。ど派手に始まり、惑星ごとに雰囲気が変わっていくカラフルな曲だが、初めて生の大音響で聴く。いまや「ジュピター」はヒット曲になったが、筆者にとって「惑星」はむしろレインボーの「DOWN TO EARTH」で「火星」と出会った曲である。

2015/07/25(土)(五十嵐太郎)

大野裕之『チャップリンとヒトラー──メディアとイメージの世界大戦』

大野裕之の『チャップリンとヒトラー』を読んでいるが、二人は4日違いで生まれた。世界を恐怖に巻き込むか、笑いを届けるか。二人のメディア戦は激しく、ナチスはチャップリンがユダヤ人だとデマを流し、ちょび髭の物真似風刺を禁じ、映画『独裁者』に圧力をかけ続けた。これはいまの日本と重なる話だと思ったら、ちょうど東京都現代美術館において政治的な問題を扱う会田誠の作品介入をめぐる事件が起きた。

2015/07/25(土)(五十嵐太郎)

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