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2015年08月15日号のレビュー/プレビュー

海上自衛隊呉史料館(てつのくじら館)

[広島県]

続いて、向かいのてつのくじら館へ。かわいい名前だが、海自の広報を兼ねた展示施設なので入場無料である。展示手法は、ややぶっきらぼう。安保で話題の機雷掃海に関する仕組みの展示が面白い。実際に使ったフロートにかわいいキャラ顔を描いているのが興味深い。また展示のハイライトは、館の手前に置かれた本物の潜水艦の内部を体験できること。たしかに、水面下を移動する究極の建築である。ちなみに、ゆめタウン、実物潜水艦、大和ミュージアム、メルヘン建築の休憩所、海の本物の船が並ぶ、脈絡がない呉の風景は、まさに日本的だ。

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

《海上自衛隊呉地方総監部第一庁舎(旧呉鎮守府庁舎)》

[広島県]

竣工:1907年

公開日ではないため、遠目に明治末につくられた丸いドームをもつ、海上自衛隊呉地方総監部を見ながら、坂を上る。歴史の見える丘からは、《噫戦艦大和之塔》があり、海を眺めると、大和を建造したドック跡、工場や造船施設などが視界に入る。

写真:上=《海上自衛隊呉地方総監部第一庁舎》、下=ドッグ跡

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

《入船山記念館(旧呉鎮守府司令長官官舎)》

[広島県]

竣工:1905年

《入船山記念館》へ。明治末に桜井小太郎が設計したハーフティンバーの洋館と和館から構成される旧呉鎮守府司令長官官舎のほか、大正時代の《旧呉海軍工廠塔時計》《旧高烏砲台火薬庫》《旧東郷家住宅離れ》、新築された郷土館と歴史民俗資料館がある。ここにも呉の歴史はたしかに刻まれているが、あれだけ大和ミュージアムに人が集まっていたのに、誰も来場者がいない。

写真:左上=《旧呉鎮守府司令長官官舎》外観、左下=《旧呉鎮守府司令長官官舎》内観、右上=《旧呉海軍工廠塔時計》、右下=《旧高烏砲台火薬庫》

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

呉市立美術館

[広島県]

隣の呉市立美術館へ。外観はメルヘンチックである。文化勲章受章者を中心としたコレクション展は、やっつけぽい。デッサンを楽しむ企画はまあまあである。が、ここもほかに人がない。戦艦大和は好きでも、歴史建築や美術は人気がないということか。

2015/07/27(月)(五十嵐太郎)

プレビュー:PACIFIKMELTINGPOT

会期:2015/09/22~2015/09/23

Art Theater dB KOBE[兵庫県]

フランス人振付家、レジーヌ・ショピノのカンパニーをハブにして、太平洋諸地域のアーティストや研究者が展開する《PACIFIKMELTINGPOT》。ショピノの基本的な関心は「口承文化」にあり、声を通した伝達が時間や空間性、身体性と切り離せないことを、コンテンポラリー・ダンスの本質に通じるものとして捉えている。ニューカレドニアやニュージーランドの先住民であるカナックやマオリなど、口承文化をまだ受け継いでいる人々とワークショップを行ない、太平洋地域の口承文化に関するリサーチを行なってきた。2013年には大阪のアートエリアB1で、「PACIFIKMELTINGPOT / In Situ Osaka」ライブパフォーマンス&ディスカッションを開催し、日本、ニューカレドニア、ニュージーランドという3つの地域のアーティストが参加した。
私は一昨年、この大阪でのパフォーマンスを実見したが、基本的には、それぞれの文化圏ごとに3グループに分かれてのショーイングという形式だった。体格差や肌の色、バネや跳躍力など身体そのものの強度、アカペラの力強い歌唱や身体の動きと一体化した音楽のリズムなど、それぞれの文化圏ごとに提示された身体性の差異は分かりやすく、とても魅力的だったが、反面、こうしたプレゼンテーションの仕方は多文化主義的な予定調和に陥りがちでもある。「多様性や差異を認め合って尊重しよう」という確認作業に落ち着いてしまいかねないのだ。
「PACIFIKMELTINGPOT / In Situ Osaka 2013」の完結編となる今回の上演では、大阪大学と城崎国際アートセンターにて、計約3週間の滞在制作が予定されている。滞在制作期間が1週間であった前回に比べると、充実したスケジュールだ。既にある「共同体」の内部に留まったまま、確認・抽出して並置するという提示方法から、身体的対話の継続とさらなる深化によって、より「メルティングポット」な状況が生まれるかに期待したい。
また、沖縄を拠点に活躍する映像作家・山城知佳子と映画監督・砂川敦志が、前回の「PACIFIKMELTINGPOT / In Situ Osaka 2013」のリサーチワークや上演の様子を撮影したドキュメンタリー映画の上映も予定されている。こちらはArt Theater dB KOBEの近くにある神戸映画資料館にて、同日程の午前中に上映されるので、合わせて鑑賞したい。

2015/07/31(金)(高嶋慈)

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