キュレーターズノート
バックナンバー
居心地、居場所、排除と公共空間──尾花賢一《上野山コスモロジー》と岸幸太写真展「傷、見た目」から
[2021年04月01日号(町村悠香)]
1月初めから3月下旬にかけて新型コロナウイルス流行のため、首都圏では再び緊急事態宣言が出された。再び休館した美術館もあるなか、筆者が勤める町田市立国際版画美術館は今回休館にはならなかった。しかし、2回目の緊急事態宣言の期間は去年春の臨時休館...
展覧会の作り方について── 「分離派建築会100年」展と「イッツ・ア・スモールワールド」展から
[2021年03月15日号(中井康之)]
展覧会の展示形式というのはいくつかの典型的スタイルがある。その原型のひとつに18世紀にはルーヴル宮の「サロン・カレ(方形の間)」で開かれるようになった、17世紀フランスアカデミーでのローマ賞受賞作の展示を端緒とする、いわゆるサロン展(官展)...
続 コロナ禍のなかでの青森県立美術館──企画展再開と青森アートミュージアム5館連携協議会の始動
[2021年03月15日号(工藤健志)]
2020年の青森県立美術館は予定していた2本の企画展が延期・中止となったが、2020年11月28日から約1年ぶりに再開。青森出身の画家の回顧展「 生誕110周年記念 阿部合成展 修羅を越えて “愛”の画家 」(2021年1月31日まで)から...
ある美術家にとっての40年間とこれから──牛島智子個展「40年ドローイングと家婦」
[2021年03月15日号(正路佐知子)]
少し前のことにはなるが、昨年12月下旬に牛島智子の個展「40年ドローイングと家婦」が福岡市美術館のギャラリーEにて開催された。牛島は2020年前半、コロナの影響をもろに受けた。3月末に参加予定だったグループ展は主催者が広報前に中止を決め、存...
境界を揺さぶる《元気炉》──入善町 下山芸術の森 発電所美術館「栗林隆展」
[2021年03月01日号(野中祐美子)]
北アルプスを背景に広がる田園風景のなかに、1926年に建設されたレンガ造りの水力発電所を再生した「下山芸術の森 発電所美術館」がある。1995年4月のオープン以来、国内では珍しく発電所を改装した美術館として注目を集めたのはもちろんのこと、発...
伝承彫刻について──10年目、気仙沼市の試み
[2021年03月01日号(山内宏泰)]
一般的な話をすれば、「震災」という言葉の意味が東日本大震災に限定されていないことは明らかだ。しかし東北の被災地でその言葉を使用した場合、ほとんどの人が東日本大震災をイメージする。とはいえ、あれから10年を経る過程で、2016年4月には熊本地...
絵画を通してのみひらかれるもの──千葉正也個展/輝板膜タペータム 落合多武展
[2021年03月01日号(能勢陽子)]
千葉正也と落合多武は、どちらもペインターと呼びうるが、日常の事物や人間以外の生き物も展示に含みながら、いわゆるインスタレーションとは異なるやはり絵画ならではの仕方で、これまで見たことのないような世界を見せる。千葉は生物や事物との距離や関係を...
自然の匂いを描く──「竹﨑和征 雨が降って晴れた日」
[2021年02月15日号(橘美貴)]
高知県立美術館が今年度新たに展覧会シリーズ「アーティスト・フォーカス」をスタートさせた。本シリーズは高知ゆかりの作家を紹介するもので、本稿では、初回となる「 竹﨑和征 雨が降って晴れた日 」をレポートする。 高知県須崎市出身の竹﨑は、大学卒...
コロナ下とアーティスト・イン・レジデンス
[2021年02月01日号(勝冶真美)]
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、私たちの生活を一変させた。その最たるものが、移動の制限だろう。これまでの私たちの生活はといえば、飛行機を乗り継いで世界各国のビエンナーレやトリエンナーレを巡ることも、日本に住みながら定期的にアジアをリ...