2024年02月15日号
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artscapeレビュー

ザ・ブロード、ロサンゼルス現代美術館(MOCA)、ハウザー&ワース・ギャラリー

2024年02月01日号

[アメリカ合衆国、ロサンゼルス]

ホテルの前から地下鉄に乗ってダウンタウンのシビックセンター/グランドパーク駅で降りて、フランク・ゲリー設計のウォルト・ディズニー・コンサートホールを横目に見ながらザ・ブロードへ。ここはブロード夫妻が集めたコレクションを公開するため2015年に開館した現代美術館で、細かい採光窓が斜めに入った白い外観は、直方体の躯体にベールをかぶせたような印象だ。その建設費1億4000万ドル(約210億円)もブロード夫妻が出資したという。入館すると洞窟のような内装に面食らう。美術館は世界的に建築の実験場になってるなあ。



ザ・ブロード(右隣はウォルト・ディズニー・コンサートホール)[筆者撮影]


建物は3階建てで、1階と3階が展示室。コレクションは1950年以降のアメリカを中心とする現代美術ばかり。アンディ・ウォーホル、バーバラ・クルーガー、ジェフ・クーンズらなじみのあるアーティストの作品もあるが、ぜんぜん知らない作家の超巨大な(それだけに薄味の)作品も多い。また、名前や主題から察するに、ネイティブアメリカンやアフロアメリカンのアーティストも多いように感じた。久しぶりのアメリカなので、これが21世紀のアメリカ美術かと感心したり呆れたり。ちなみに日本人作家で見かけたのは草間彌生と村上隆の作品のみ。



ザ・ブロード 展示室 [筆者撮影]


斜向かいのロサンゼルス現代美術館へ。かつてMOCAといえば磯崎新設計のこの美術館を指していたけど、いまや各地に現代美術館が林立したせいかLAMOCAと呼ばれることが多い。また、前回来たときはここが最先端だったのが、いまや最先端があっちこっちに分散してしまい、ここは閑散としていた。いや閑散としていたのは展示が1970〜1980年代の美術を中心としていたせいかもしれない。いまの「目立てば勝ち」みたいなアートとは違い、半世紀ほど前は見るものを考えさせる美術が多かったからなあ。ところで、この近辺にディズニー・コンサートホールやザ・ブロードなど特徴のある建築の文化施設が多いのは、MOCAの建築が起爆剤になったからではないかとにらんでいる。もっともディズニー・コンサートホールやザ・ブロードが建ったいまとなっては、MOCAはむしろオーソドックスな古典建築の風格さえ漂っているが。



ロサンゼルス現代美術館(MOCA)[筆者撮影]


バスで倉庫街のハウザー&ワースへ。ハウザー&ワースはチューリヒで創業したギャラリーで、世界に17もの支店を持つ「メガギャラリー」のひとつ。驚くのは地中海の小さな島をひとつ丸ごとアートセンターにしたり、イギリスの庭園を現代美術の展示場にしたり、やることの規模が大きすぎてギャラリーの枠を超えているのだ。ここでも2階建ての大きな建物を丸ごとギャラリーに当てている、と感心していたら、そんなもんじゃなかった。裏に続く倉庫もすべて別の2つのギャラリーとレストラン、ブックショップなどに使われ、この一区画全体がハウザー&ワースの敷地らしいのだ。これはおったまげ。いったいどんだけ稼いでいるんだ? またこの界隈にはNPOのアートセンターやカフェが集まり、壁はグラフィティに覆われ、まるでかつてのニューヨークのソーホーを彷彿させる。扱われている作品はそんなに大したことないのにね。



ハウザー&ワース [筆者撮影]



ハウザー&ワース周辺のグラフィティ [筆者撮影]


The Broad:https://www.thebroad.org/

2024/01/03(水)(村田真)

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