artscapeレビュー
浅倉伸 Maniacushionoid
2011年07月01日号
会期:2011/05/07~2011/05/29
湘南くじら館スペースkujira[神奈川県]
岩手県在住で、今年の「VOCA2011」展に出品した浅倉伸の個展。色とりどりのフェルトに黒いサインペンだけで細かい模様を描き込むシリーズを発表した。その絵は内臓的というかゴシック的というか、いずれにせよ鬼気迫る迫力を伴っているが、内部に詰め物をしてクッションのように膨らませているせいか、ゆるやかに湾曲した表面がある種の触覚性や肉体性を強く醸し出している。たとえていえば、女性の丸みを帯びた臀部に彫りこまれたタトゥーに近いのかもしれない。けれども、浅倉の絵がおもしろいのは、そうしたエロティシズムに加えて、それが表面に描かれているにもかかわらず、その裏面を連想させるからだ。肉体のフォルムを再現しながらも、その内部を透視させるといってもいい。身体的で触覚的な表面に内臓的なイメージが現われているという二重性が見る者の視覚に訴えかけてくるのだ。そのようにしてイメージが重なり合いながら広がっていく経験こそ、絵画の魅力ではなかったか。
2011/05/29(日)(福住廉)