artscapeレビュー

キッズ・オールライト

2011年07月01日号

会期:2011/04/29

TOHOシネマズシャンテ[東京都]

レズビアンのカップルが同じ男性から精子提供を受けてそれぞれ出産、その息子と娘の4人で構成された家族の物語。設定からして複雑きわまるが、ここにドナーの男性が介入してくることによって、家族が分解するほどの亀裂が生じ、さらに問題が込み入ってくる。ところが、この映画がおもしろいのは、深刻で複雑な問題を抱えながらも、ユーモアによって軽く脱力させるポイントを随所に忍ばせているところだ。つい欲望に負けてしまう哀しい性や悪気もなく口の悪い言葉を吐く無邪気な感性。特殊な人間性というより、身に覚えのある心理だからこそ、観客は笑い飛ばすことができる。あえて物語の緊張を解きほぐすような仕掛けを用意しているところに、核家族の狂気をただ深刻に描くことに終始しがちな日本の家族映画とは異なる素地を見たような気がした。

2011/06/14(火)(福住廉)

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