artscapeレビュー
ミツバチの羽音と地球の回転
2011年07月01日号
会期:2011/02/19
ユーロスペース[東京都]
原発の問題に一貫して取り組んでいる鎌仲ひとみ監督によるドキュメンタリー映画。山口県の上関原発計画に反対する祝島の島民たちの暮らしを丁寧に描きながら、脱原発の方針のもと自然エネルギー社会にシフトしつつあるスウェーデンの事例を紹介する展開が小気味よい。反対運動を粘り強く繰り広げる島民に向かって、電力会社は島の貧しい暮らしを原発によって救済してやるという旨の言葉を吐いているが、東日本大震災を経た今となっては、このレトリックは完全に破綻してしまった。それでもなお原発の維持をもくろむ勢力は、脱原発の運動に「代替案を示せ」と迫るが、具体的な代替案はこの映画に凝縮して描かれている。世話をしてやるという顔をしながら近づいてくる怪しいやつには、思い切って「大きなお世話だ」と言ってやろう。
2011/06/15(水)(福住廉)