artscapeレビュー

ライゾマティクス グラフィックデザインの死角

2016年07月01日号

会期:2016/05/26~2016/07/09

京都dddギャラリー[京都府]

最新のデジタル技術を駆使してさまざまなクリエーションを手掛けるプロダクション、ライゾマティクスが、グラフィックデザインをテーマにした展覧会を開催。田中一光、福田繁雄、永井一正、横尾忠則のポスター約3000点を解析し、「配色」「構成」「感性」の3項目でそれぞれの特徴を数値化。そして、これまでのグラフィックデザインが見逃してきた領域(=死角)を見つけ出し、新たな創造の可能性を提案した。解析結果を見ると、例えば「配色」では、田中一光は白に顕著な特徴が見られるのに対し、福田と永井は黒がキーカラーだが、ほかの色との関係が対照的だ。そして横尾はほかの3人とはまったく異なる特性を持つ。こうした知見は過去にも批評家の言葉で主観的に示されていたかもしれないが、客観的な数値をもとに3Dヴィジュアルイメージ等で示されると、やはり新鮮な驚きを禁じ得ない。その一方、発見した「死角」を基に制作した4点のポスターは、いまいち魅力に欠けていた。少なくとも現時点では、人間の創造力がコンピューターを上回っているようだ。

2016/05/31(火)(小吹隆文)

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