artscapeレビュー
中ハシ克シゲ「もっと面白くなるかもしれない。」
2016年07月01日号
会期:2016/06/04~2016/06/22
SUNABA GALLERY
石塀に松といった典型的な日本の情景や、第2次大戦中の戦闘機にまつわる記憶をテーマにした「ゼロ・プロジェクト」などで知られる中ハシ克シゲ。ところが本展で彼が見せたのは、これまでのコンセプチュアルな作品とは真逆の作品だった。それは、両手で持てるぐらいの粘土の塊を、押す、引っ張る、ねじる、ちぎるなどして造形したもの。雑念(=造形的意識)が生じる前に一気に作り上げており、ある種アール・ブリュットにも通じる魅力が感じられる。作品は日々制作されるが、作家が定期的に「一人合評」を行ない、一定回数以上選ばれたものだけが作品として認められるそうだ。実績のある作家が過去のキャリアをリセットするのは決断のいる行為だが、中ハシの新作は果たしてどのように評価されるのだろうか。今後もずっと新鮮さを保ち続けられるか否かが鍵となるだろう。なお、中ハシは6年前から座禅に取り組んでおり、その経験が本作に大きな影響を与えているようだ。
2016/06/04(土)(小吹隆文)