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女子美染織コレクション展Part6×渡辺家コレクション TEXTIL DESIGN ─ 時代をうつす布 ─

2016年07月01日号

会期:2016/06/11~2016/07/24

女子美アートミュージアム[神奈川県]

享和元年(1801年)に創業した浅草「駒形どぜう」本家の長男に嫁いだ渡辺八重子氏(昭和7年生)は、伝統的なお細工物(布製の小物)の創作と伝承に努めるかたわら、多年にわたって着物や古布を蒐集してきた。史料の散逸を防ぎ、教育に活用して欲しいとの願いから、多数の染織コレクションを所蔵している女子美術大学にそのコレクションが一括して寄贈されることになった。本展は2014年に寄贈された約2000点に上るコレクションの中から特に渡辺氏の記憶に残る打掛、振袖、子供の着物に焦点を当てて約60点を選んで紹介する企画。江戸末期から昭和にかけての着物に加え、女子美が所蔵する旧カネボウコレクションの江戸時代前期から後期の小袖が展示されている。
出展作品のなかでもとくに興味惹かれた着物は、大正期から昭和初期にかけてのもの。化学染料の普及で色彩が豊かになり、アール・ヌーヴォーなど西洋の美術・デザインの影響を受けて伝統的な着物の意匠とは異なる多様なモチーフの図案が現れた時代だ。子供の着物には、子犬や玉乗りをするピエロ、飛行船と行進する人形の兵隊を組み合わせたモチーフ(これは「戦争柄」の一種か)など、可愛らしい意匠が見られる。列車と走る犬をモチーフにした面白い柄の浴衣地もある。 孔雀模様はアール・ヌーヴォーの影響か。大人の着物にはバラやユリの花など、明治以降に栽培・鑑賞されるようになった植物がモチーフとして大胆にあしらわれているものも。海軍をイメージする桜錨文様の帯は売上の一部が国のために寄付されるものだったという。まさに布は時代を映し今に伝えるメディアでもあるのだ。
着物の一部は着装姿で展示されている。主にフォルムの歴史的変化に焦点が当てられる西洋ファッションでは着装による展示が一般的であるが、江戸時代以降、長らく小袖を標準型として展開してきた日本の着物は、衣桁に掛けて意匠を大きく見せる展示が一般的。着装にすると帯で締めるために生地が傷むなど、資料保存の点でもあまり望ましくないのだそうだが、今回は寄贈者である渡辺八重子氏の許可を得てこのような展示が実現したとのこと。帯や半襟はなるべく同時代のものを選び、着付のスタイルも時代を合わせているという。筆者は着物の実際についてほとんど知識がないのだが、なるほど、着装で展示することで、じっさいの意匠の見えかたが分かるばかりでなく、裾裏に施された文様の見せかたなど、着物を着る人々の細部へのこだわりをも見せることができることを、この展示で知った。[新川徳彦]


左:渡辺家コレクション展示風景 右:女子美染織コレクション展示風景

2016/06/13(月)(SYNK)

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