artscapeレビュー

人長果月展─Biosphere─

2017年10月01日号

会期:2017/09/05~2017/09/16

galerie 16[京都府]

人長果月はインタラクティブなビデオインスタレーションをつくり続けているアーティストだ。今回の作品は「biosphere」(生物圏)と題されており、森の木々や草花、動物たち、池の水面や魚などを撮影した映像が幾重も重なったものだ。そして画面の前を人が横切る、動くなどすると映像のレイヤーがほころんで、隠れていた映像が垣間見える。また展示室の端には光源と回転するレンズが設置されており、そこから放たれた光が映像に干渉する仕組みにもなっている。タイトルからも窺えるが、本作のテーマは近年変調が著しい地球環境への危機感であろう。また本作のもうひとつの特徴は、音楽の効果的な使用だ。レガートな和音から成るオリジナル楽曲は、「カノン進行」と呼ばれる有名なコード進行でつくられており、映像に荘重さを加えていた。それはまるでレクイエムのようであり、作品を見続けるうちに、自分が人類滅亡後の世界にひとり生き残って、失われた自然を懐かしんでいるかのような気持ちにさせられた。

2017/09/05(火)(小吹隆文)

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