artscapeレビュー

Plywood: Material of the Modern World展

2017年10月01日号

会期:2017/07/15~2017/11/12

ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館[イギリス]

成型合板の椅子は、戦後家具の代表的存在といっていい。軽くて丈夫で廉価、そして曲面の美しい造形を可能にした。本展は、「合板」という素材がいかに現代の生活に貢献してきたかについて、デザイン文化に係る多様な資料をもって検討している。そもそも各種資材としての合板が普及したのは19世紀。第二次世界大戦下の米国では軍需産業でも使われた。本展では、19世紀のシンガーミシンのカヴァーに使われた合板、チャールズ・イームズが傷ついた兵士のためにデザインした合板の添木、マルセル・ブロイヤーやアルヴァ・アールトらモダン・デザインの旗手たちによる流麗な形の椅子、車などの乗り物、図面などが展示されている。木の切削、成型、コンピュータ数値制御システムによるカット作業(CNC Cutting)という、加工プロセスに準じた章立てで展示品を構成しており、近代から21世紀までの製造技術にフォーカスしている。デジタル時代における合板の意味に配慮しながら、ものの「素材性」を際立たせた展覧会。[竹内有子]

2017/09/03(日)(SYNK)

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